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ヴェロニカ・フェリアーニ

 1978年、サンパウロから北へ300キロの内陸の街、ヒベイラゥン・プレットに生まれる。8歳で初めてギターを手にする。17歳で大学進学(サンパウロ大学建築・都市計画学部)のためにサンパウロへ。しかしながら大学卒業までには、歌うことへの情熱を忘れがたく、音楽を学び直すことを決める。

 ステージに初めて上がり、人前で歌ったのは2003年12月4日のこと。その年の〈プレミオ・ヴィザ〉(=ブラジル屈指の音楽コンテスト)の受賞者であるギタリストで作曲家のシコ・サライーヴァのステージに客演した。ヴェロニカはその後2年間、シコ・サライーヴァと共にブラジル中を様々なプロジェクトで廻った。同時に並行して、サンパウロとリオデジャネイロの〈ホーダ・ヂ・サンバ〉に参加し、サンバの何たるかを知る。2004年には6ヶ月の間、サンパウロ市ピニェイロス地区にあるライヴハウス〈トラッソ・ヂ・ウニアゥン〉において、様々なサンバのレジェンドたちのオープニングアクトを務め、モナルコ、ネルソン・サルジェント、ヒアシャゥン、チア・スリッカ、チア・ドッカ、ノッカ・ダ・ポルテーラ、セウ・ジャイール・ド・カヴァキーニョ、ワルテル・アルファイアッチ、ウィルソン・モレイラ、モアシール・ルス、ルイス・カルロス・ダ・ヴィラ、ウィルソン・ダス・ネヴィス、ビリー・ブランコと言った生きる伝説たちと共演。90年代末期から2000年代初頭に始まる、サンバ回帰とサンバ復興のムーブメントを新しい世代のアーティストと共に間近に見、そのムーブメントの一部となった。その年、ブラジルで最も権威ある雑誌〈ヴェージャ〉が選ぶ〈ベスト・ライブハウス〉に〈トラッソ・ヂ・ウニアゥン〉は選ばれた。

 2005年から2008年の長い時間をかけ、多くのファンを獲得していった。その間サンパウロ市ヴィラ・マダレーナ地区の〈オー・ボロゴドー〉、サンバ/MPBのベテラン歌手アウレア・マルチンスと共に、リオ市ラパ地区の〈カリオカ・ダ・ジェマ〉に、サンパウロのビッグ・バンド〈ガフィエイラ・サンパウロ〉と共にサンパウロ市イジエノポリス地区の〈トム・ジャズ〉に出演するが、アルバムデビュー前の歌手がブッキングされるのはいずれも異例のことだった。2007年に毎回ある作曲家を特集する人気音楽番組〈ソン・ブラジル〉に出演しイヴァン・リンスの歌を歌う。2008年にサンパウロの一大アートイベント〈ヴィラーダ・クルトゥラル〉で女性歌手を集めたコンサートに出演し、彼女の歌はエスタダゥン紙(サンパウロで1、2を争う新聞)においてジャーナリストのラウロ・リズボア・ガルシアによって最もよかった4つの歌唱の1つに選ばれた。

 2009年に、ヴェロニカ・フェリアーニはデビューアルバム『Verônica Ferriani』をリリース。プロデューサーはブラジル音楽界の鬼才、ビヂ。アルバムのレパートリーは、綿密に考えられ、素晴らしいレパトリーが揃った。マエストロ・スポッキが管楽器のアレンジをしたフレヴォの「Na volta da Ladeira」やボレロの「Bem feito」のような、このアルバムで初めて世に出た美しい曲があると同時に、パウリーニョ・ダ・ヴィオラの「Perder e ganhar」やマルコス・ヴァーリの挑発的な曲「Com mais de trinha」、ジョアン・ドナートの穏やかな曲「Ahiê」、アルバムのオープニング曲でゴンザギーニャの「Um sorriso nos lábios」といった曲を、新鮮で現代的なヴァージョンで甦らせた。他にもアルバムは、ルイス・エンリケとアメリカ出身のオスカー・ブラウンJrの共作曲で英語詞の「If you want to be a lover」も収録している。同曲は、ルイスやライザ・ミネリが最初に録音した。パーカッションとブラジル音楽に魅了されているヴェロニカだが、アルバムにはラテンやアフリカのリズムも取り入れ、ジャーナリストのトニーニョ・スペソトは「2009年にリリースされたものの中で最も素晴らしいアルバムの1つ」と評した。

 また、同じ2009年には、〈プロジェト・ピシンギーニャ〉に前述のギタリスト、シコ・サライーヴァと参加。そのまま2人でアルバム『Sobre Palavras』を録音する。同アルバムはシコとマウロ・アギアールの共作の未発表曲を録音するプロジェクトだった。同プロジェクトで2010年の〈プレミオ・カタヴェント〉の最優秀女性歌手にノミネートされた。公的支援が認められ、各地を回るコンサート・ツアーが行われた。

 2011年には、ガフィエラ・サンパウロが第22回ブラジル音楽賞で最優秀サンバ・グループを受賞。同賞では、最優秀男性歌手部門でゼカ・パゴヂーニョ、最優秀女性歌手部門でアルシオーニが受賞していた。

 多くの素晴らしい女性歌手がいる国ブラジルで、ヴェロニカは突出した活動をしてきた。彼女のパーソナリティーが感じられ、力強さと優雅の双方を備えている彼女の声や、生まれ持ったステージ上の存在感に魅了され、多くのアーティストが彼女とステージで共演してきた。ベッチ・カルヴァーリョ、イヴァン・リンス、トキーニョ、マルチナーリア、スポッキ・フレヴォ・オーケストラ、フランシス・ハイミ、マルセロD2、ジャイール・オリヴェイラ、トン・ゼー、モスカ、マルチーニョ・ダ・ヴィラ、モアシール・ルス、エルトン・メデイロス、ゼー・ヘナートといったアーティストがステージに彼女をゲストで呼び、ヴェロニカは彼らとステージを共にしてきた。また、大きなプロジェクトやフェスティバルに参加しブラジル全土だけでなく国外でも多くのステージに立ってきた。〈カラ・セ - 音楽における検閲〉、〈カントス・ヂ・アレイア - クララ・ヌネス70年〉〈サンバ・ヂ・ブレッキ・イ・オウトラス・ボッサス〉〈エリス・レジーナのいない30年〉〈サンバ・グアルダード〉〈ブラジルの新しい声(コロンビア、ボゴタ)〉といったプロジェクトでステージに立ち、録音ではアドニラン・バルボーザ、アタウルフォ・アルヴェス、ゴンザガォン、カルメン・ミランダ、エルヴェルト・マルチンス、シキーニャ・ゴンザーガ、ネルソン・カヴァキーニョといった音楽家のトリビュートCDに参加してきた。

 そして2013年の来日とタイミングを合わせ、自身名義で2作目となる新作を発表する。今回の来日で、サンパウロの良質なMPB、サンバ、そして現代音楽をたっぷりと届けてくれることだろう。



ヴェロニカ・フェリアーニ来日直前インタビュー