ザ・ギフト、ブライアン・イーノとアルバム制作

ザ・ギフトがブライアン・イーノと制作した『Love Without Violin』

ザ・ギフトがブライアン・イーノと制作した『Love Without Violin』

 

4人組ロックバンド、ザ・ギフトが、ブライアン・イーノと制作していた新しいアルバムからの先行曲「Love Without Violin(原題)」を、先月末公式サイト上にて公開し、大きな反響を呼んでいる。というのも、この曲でイーノはプロデュースだけでなく、歌詞の共作、さらには自身の歌声の提供も行っているのだ。

ザ・ギフトは、1994年リスボン対岸の街アルコバサで結成されて以降、紅一点ヴォーカリスト、ソニア・タヴァレスのパワフルな歌唱とシンセポップ〜ニューウェーヴ風のダイナミックなサウンドでポルトガルにおいて最も求心力のあるバンドのひとつである。そして、歌詞の大半が英語詞であることからも、世界的な活躍を期待されているロック・ポップアクトのひとつである。

しかし、バンドの名前を国外に広く知らしめたのは、タヴァレスとバンドの創設者にして中心人物、ヌーノ・ゴンサルヴェスによるサイドプロジェクト、アマリア・オージ(Amália Hoje)であった。2009年、アマリア・ロドリゲスの死後10年を記念して発足した「今日(こんにち)のアマリア」を意味するこのプロジェクトは、その名の通りロドリゲスの往年の名曲群を現代風にアレンジして一枚のアルバムに収録したもので、この年ポルトガルで最も売れたアルバムに認定された。アマリア・オージの爆発的ヒットは、彼らのメイン・プロジェクトであるザ・ギフトに良くも悪くも影響したようで、タヴァレスの「自分のアーティストとしての本質はファドではない」という趣旨の発言が大きく取り上げられたこともあった。

しかし、以降はザ・ギフトとしての活動に専念し、14年から今年にかけてバンド結成20周年を記念したベストアルバムの発表とそれに伴うツアーなど精力的に活動を継続しており、今回のイーノとのアルバム制作に至る。バンド通算7作目となる今作は発売前ながら、国外のメディアからも大いに注目を集めており、ある英語圏メディアに対しイーノはこう語っている。「(先行シングルの)〝Love Without Violins〟のアイデアは、ソニアの驚くべき声から生まれたんだ。彼女は自分より数オクターヴ高い音が出せるけれど、自分と同じ音域で歌うバリトンソプラノのような感じで、自分には出せないその数オクダーヴがとにかく羨ましいよ。彼女が歌詞も仕上がっていないこの曲の原型を歌ったとき、その暗く危険な音の世界から、〝普通とは異なる類の愛〟という楽曲の原風景を思い付いたんだ。(中略)この曲は、多分自分が今まで書いた中で唯一〝Love”という言葉を使っている曲だと思うね。でもそれは子どもっぽい愛ではなくて、厳しい愛のことで、ヴァイオリンの無い愛のことなんだ」

(ポルトガル●山口詩織)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ11月号に掲載されています。
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