サルヴァドール異色バンド、オルケストラ・フンピレスが新作

バンドリーダー、作曲家、フルート、サックス奏者のレイチエレス・レイチ

バンドリーダー、作曲家、フルート、サックス奏者のレイチエレス・レイチ

サルヴァドールの異色バンド、オルケストラ・フンピレスが二枚目のアルバムを発表した。同バンドは、ブラスバンドと多数のパーカッション・スタイルの、カンドンブレ(アフロ・ブラジリアン宗教)のリズムをふんだんにとりいれたインストゥルメントだけのジャズ・ビッグ・バンドスタイル。2006年に結成されてから、ペロウリーニョを中心に演奏活動を始め、次第に人気が上昇してきた。庶民は相変わらず、パゴージ、ファンク、アシェが好きで、地元民でさえフンピレスを未だに知らない人たちも多い。だが、新しい音楽を好きな人たちの間では、バイアーナシステムとともにサルヴァドールの人気グループとして名前が知られている。また現在では、海外にいるアフロ文化オタクもチェックしているバンドだ。

新アルバムタイトルは「A Saga da Travessia/航海伝説(航海冒険記)」。「黒人奴隷船というテーマで作品を作ってみたいと、以前から考えていた」と同バンドのリーダーであり、アルバム曲を作曲したフルート、サックス奏者のレイチエレス・レイチは語る。最初の3曲は、黒人たちが奴隷船に乗ってアフリカ大陸を旅立つ場面、大西洋の航海、そしてサルヴァドールへの到着とそれぞれ分けられている。レイチは、「黒人たちの大陸間移動の流れを、悲劇のストーリーとしてよりも、より強い力を持つポジティブな視点として、とらえながら描いてる」と説明している。そのほかに、ジルベルト・ジルをオマージュしたイジェシャのリズムの曲、サルヴァドールの庶民的なセッチ・ポルタス地区にある市場で鶏を放った時にインスピレーションがわいたという曲、アフリカの祖先の元になるアラブをオマージュした曲、カポエイラのリズムとオグンという神様のリズムをミックスした曲などに構成されている。1枚目のアルバムは、それぞれのリズムが、一つ一つの曲を構成していた。今回のアルバムは、ほとんどが、一曲の中にいろんなリズムを途中でカットしたり、コラージュして制作されたとレイチは説明した。

近年のサルヴァドールは、再開発計画の影響で、市内の野外や路上市場などが整理排除され、この街独特のカオス化した風景が、だんだんと減ってきてサルヴァドールらしさが失われてきている。アルバムから流れてくるリズムやメロディーを聴くと、強い日差しの中で色とりどりのフルーツを売る野外市場の活気ある光景と、細くて濡れた路上の奥の闇のうごめく黒い肌の神秘的で生々しい「バイーアの光景」が頭の中を交差した。

(バイーア●北村欧介)


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