パンクとソニデロの展示 意外に近いそのルーツと広まり

『Modernidad pirateada』で展示されるソニデロのジオラマ© MIHO NAGAYA

『Modernidad pirateada』で展示されるソニデロのジオラマ© MIHO NAGAYA

メキシコのアンダーグラウンド音楽に興味がある人にとっては、必見の展覧会『Modernidad pirateada(海賊版化の近代)』が、メキシコシティのサンタマリア・ラ・リベラ地区にある、メキシコ国立自治大学付属チョポ美術館にて2016年9月25日まで開催中だ。

同展は、メキシコのパンク・ハードコアと、「ソニデロ(メキシコのクンビアなど、トロピカル音楽を中心とした、路上のサウンドシステム)」の、二つのメキシコを代表するサブカルチャーを取り上げている。スペイン出身メキシコ在住のアーティスト、ホタ・イスキエルドにより企画され、メキシコ、コロンビア、スペイン、スイスのアーティストや、ジャーナリストによる写真、映像などの取材記録や、コレクションされた資料によって構成される。

展示は、ソニデロ部門から始まる。ソニデロはメキシコ全土及び、米国のメキシコ系移民居住区に、6万近く存在するとされ、それぞれのバリオ(低所得者層が住む下町地区)に、ソニデロが存在する。メキシコのクンビアの発展と定着に、多大な影響を与えた下町文化である。

各ソニデロが、ド派手なロゴを使っているのだが、同展では、その多彩なロゴタイプ、大量の海賊版CDジャケット、ソニデロにかけてほしい曲をリクエストするために、観衆が掲げるメッセージボードのコレクション、街角のソニデロ風景のジオラマ、路上に置かれる巨大スピーカーなどが展示され、かなりの迫力だ。

いっぽう、パンク部門は、メキシコシティとグアダラハラの2都市のパンクシーンについてとりあげている。資料映像や、ファンジン、カセットテープのジャケット、ポスターやフライヤーなどが展示されている。

メキシコのパンクとソニデロは、音楽ジャンル的に、水と油のように見えながらも、その広がり方や、根付き方が近いのが、面白い。両方とも、1970年前後にメキシコシティのバリオから派生し、騒々しい音を路上で奏で、大量の海賊版コピーを使用し、その音楽を愛する人たちの間で、口コミ的に広がり、確固としたコミュニティを作り上げてきた。コミュニティの結束が強いため、体制側から疎まれる存在なのも似ている。

2016年7月30日の同展オープニングでは、ソニデロを招いてのダンスパーティーや、ハードコアバンドのライヴも行われ、盛況だった。会期中は、会議、ライヴ、ワークショップなど、関連イベントも行われる。

(メキシコ●長屋美保)


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