ミキ・ゴンサレスがプロデュース 新譜『カイトロ&フェリックス』

自宅スタジオで待望の新譜を手にするミキ・ゴンサレス© Oscar Chambi

自宅スタジオで待望の新譜を手にするミキ・ゴンサレス© Oscar Chambi

ミキ・ゴンサレスと言えば、90年代のペルー・ロックの牽引者であり、アフロペルー音楽やアンデス音楽を積極的に取り入れたフュージョン音楽の先駆け的存在。近年は、エレクトロニカ系の作品を発表し、DJとしても活躍している。その彼がプロデュースした新譜『カイトロ&フェリックス』が、7月に発売された。タイトル通り、ペルーを代表するカホン奏者のひとりであるカイトロ・ソトとギタリストのフェリックス・カサベルデの追悼アルバムである。

楽団ペルー・ネグロ創設時から、楽曲の作詞を手がけていた詩人セサル・カルボを通じて、アフロペルー音楽へ傾倒していったミキ。このセサルの紹介がきっかけでカイトロとフェリックスとの親交を深めていく。自らの音楽活動とは別に、アフロペルー音楽のアルバム制作を構想していたミキは、97年に自分のスタジオにふたりを集め、「トロ・マタ」や「エル・パヤンデ」などの伝統楽曲を中心に選曲し、カイトロがボーカル兼カホン、フェリックスがギターを演奏することで、録音を開始した。その後、2000年には、全12曲の録音を終了したが、アルバムは未完成状態のままプロジェクトがストップしてしまっていた。

そして、04年、カイトロが逝去し、11年には、フェリックスもこの世を去った。ミキ自身、発表する機会を完全に見失っていたというが、長年の友人と作り上げた思い出深い音源の再編集に3年をかけ、今回、待望のリリースを迎えた。

本作品でミキは、ミュージシャンとして参加していない。「70年代のアフロペルー音楽のサウンドと精神をそのままアルバムに収めたかった」と話す。また、「現在、一般的に演奏されているアフロペルー音楽は、60、70年代の巨匠たちが抱いていたアフロペルー音楽のコンセプトと全く異なっている」と苦言を呈する。だからこそ、このアルバムでは、それが保持されるように編集段階で追加した音源の参加アーティストも特別にセレクトしたそうだ。

「昔は、有名な音楽家たちが、友人宅に集まって朝まで歌って演奏したりしていた。自分も若い時に、チャブーカ・グランダやアベラルド・バスケス、サンボ・カベーロたちとそうした空間を共有した。だから、その経験をこのアルバムで再現したいと思った。まるで生演奏を聞いているかのように、彼らの音とエネルギーを聴き手が感じられるはず」と、作品を紹介してくれた。

(ペルー●川又千加子)


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