サッカーユーロ2016の興奮冷めやらぬポルトガルで、その熱気を引き継ぐかのように各地で開催される夏の音楽フェスティバル。今年、特に注目されている3つのフェスティバルを紹介したい。
まず、ポルトガル中部の人口約千人の小村で開催されるボンス・ソンスは、「最もポルトガルらしく、美しい音楽フェスティバル」として音楽好きの間で話題のフェスティバルだ。ファド、ロック、ポップ、ダンスから、世界遺産にも認定されたカント・アレンテジャーノなどの伝統フォーク音楽までをバランス良く取り上げたラインナップは、ポルトガル音楽の多様性を感じられる良い機会となるだろう。
また、玄人向けのキュレーションで知られるEDPクール・ジャズは、リスボン郊外のポンバル侯爵庭園の緑に囲まれた環境の中、1日1〜2アーティストのコンサートをじっくり楽しめるのが魅力。今年はオマーラ・ポルトゥオンド、マリーザ・モンチ、ザ・シネマティック・オーケストラらの出演が特に注目されている。
そして、リスボン郊外オエイラスで毎年7月前半に開催されるNOSアライヴ・フェスティバルは、今年で10年目の比較的若いイベントながら、ポルトガルを代表するメガ・フェスティバルへと成長している。ヘッドライナーも、今年はレディオヘッド、ピクシーズ、ザ・ケミカル・ブラザーズにロバート・プラントと、他のヨーロッパ諸国の巨大有名音楽フェスと比較しても遜色ないレベルに達しつつあり、ヴァカンスを兼ねて参加する外国人客の数も年々増加している。実際、今回のNOSアライヴの来場者数は約15万人で、国外で販売されたチケットは3万2千枚だという。
それを意識してか、今回から新設されたのがポルトガルらしさを感じられるエリア。会場内にリスボン中心部で見られる伝統的ポンバル様式の建物を完全再現し、足元には波模様の石畳を敷いた一角は、本物のリスボンの街角と勘違いするほどの完成度。そして極め付けは、その建物内部に設けられたカーザ・デ・ファドを模した「ファド・カフェ」ステージで、その名の通りカーザ・デ・ファド風の狭い屋内ステージなのだが、ティアゴ・ベッテンコートやデッド・コンボといった一流ポルトガルアーティストの演奏を間近で見ることができ、外国人だけでなく、地元ポルトガル人にも好評だったということだ。音楽フェスティバルも工夫次第で立派な観光資源になりうる、という事実は日本も学ぶところがあるのではないだろうか。
(ポルトガル●山口詩織)
こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ8月号に掲載されています。
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