イスラエルの歌姫、モル・カルバシがパリで新譜お披露目ライヴ!!

モル・カルバシの最新アルバム 『オホス・デ・ノビア』

モル・カルバシの最新アルバム
『オホス・デ・ノビア』

ロンドンをベースに欧州で音楽活動を展開するモル・カルバシが新譜『オホス・デ・ノビア(Ojos de Novia)』(アラマ・レコード)をリリースした。2008年のデビューアルバム『The beauty and the sea』以来、中世のラディノ語(ユダヤ・スペイン語)にこだわるモル・カルバシは1986年エルサレム生まれ、母方はモロッコ系、父方はペルシャ系のユダヤ人だ。スファラディーム音楽を現代人の感覚で歌い続けている(本誌2009年6月号掲載)。筆者は当時担当していたパリのボランティア・ラジオの番組でインタビューする機会があった。初々しさの残るまだ23歳の彼女が一旦ステージに立つと大人の雰囲気を漂わせ、声量豊かなヴォーカルに舌を巻いたものだった。第二作『Daughter of the spring』(本誌2011年8月号掲載)の後、2013年にはアンダルシアのリズムに溢れた第三作『La Tsadika』をリリースする。そして第四作の本盤はモロッコ・カラーを前面に出したアルバムだ。これまでの作品と同様、ギタリストでパートナーでもあるジョー・タイラーとモル・カルバシの共同プロジュースによるものだ(全13曲収録)。

5月31日、パリ東駅近くにあるジャズハウス「ニュー・モーニング」でモル・カルバシの新譜お披露目コンサートがあった。オリエンタル情緒をかきたてるインストの後、長い黒髪をなびかせ、あでやかな深紅のロングドレス姿で歌いながらステージに登場したモル・カルバシ。こぶしをきかし、全身全霊で声を絞り出す。一瞬、ネジが狂ってしまったかと思うほどの不協和音の波が押し寄せる。こうしてステージはデビュー盤に収録されているオリジナル曲「ロサ」で始まった。次は一転して透き通った声で淡々と歌い上げた。モロッコ系の母方の祖母エステに捧げた曲「アフヴァティ・エステ」だ。詩人の母ショシャナ・カルバシがヘブライ語で作詞し、モル・カルバシが作曲したものである。叫ぶように奇声を発する衝撃的なベルベル伝統歌の「イジゲン」があるかと思えば、そっとささやくように愛娘ヤスミンへの愛がにじみ出た自作曲「パルパリム」や感情を爆発させてドラマチックに聴かせる壮大な曲「スソナ」、新譜のタイトルにある母ショシャナ作詞の「オホス・デ・ノビア」など同盤に収録された曲が次から次へと披露された。曲ごとにくるくると声が七変化するさまは見事だ。幕間後に金色にきらきら輝くドレスで再登場し、リズムに乗ってしなやかに体を動かすモル・カルバシ。視覚と聴覚から中世へといざなう聴衆の心をしっかりつかんだ至福のひとときであった。

(パリ●植野和子)

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ7月号に掲載されています。

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