与党カディマ第一党守るも中東和平に厳しい展開

 昨年末からのイスラエルによるパレスチナのガザ地区への大規模な空爆が停止されて3週間。世界が注目する中で2月10日総選挙が行われた。

 11日早朝(日本時間正午すぎ)、開票作業がほぼ終了し、最大野党リクードを中心とする右派勢力が過半数を獲得した。ツイッピー・リヴニ率いる中道カディマは1議席差で第1党の座を守ったが、この段階で、和平消極派の右派勢力はネタニヤフ元首相率いるリクードの27議席、極右「わが家イスラエル」の15議席など計65議席を獲得。これに対し、和平に積極的な中道・左派勢力はカディマが28議席、中道左派労働党が13議席など計55議席にとどまった。

 総選挙は、パレスチナ自治区ガザでの大規模軍事作戦が終わって間もない段階で行われ、「和平より安全」と国民の安全保障に対する危機感が一時は急激に右派への支持を押し上げた。しかし、カディマを率いるリヴニ外相が掲げた「女性による清廉な新しい政治」への理解が広がったことや、行き過ぎた右傾化を警戒する浮動票の取り込みで、右派の一方的な勝利にはならなかった。

 今後は元労働党党首で、人の良い性格が災いして選挙に弱い「無念の人」シモン・ペレス大統領が各党党首と協議、連立を実現する可能性が最も高い党首、つまりリヴリ、ネタニヤフ両氏のいずれかに組閣を要請する運びとなる。

 世界情勢は、EU、フランス、ロシアがガザ空爆での即時停戦を訴えたのに対し、ブッシュ政権は民間人への攻撃を避難するにとどまるなど、足並みは揃っていない。オバマ政権誕生で、さすがに米軍がイスラエルを支援するという展開はなくなったものの、オバマ政権内部にはイスラエルの支持者が多いのも事実。

 一番不気味なのはロシアの動き。昨年8月に起こったグルジア紛争で、グルジア側が持ったイスラエル製兵器を強力に破壊したロシアに対し、アラブ諸国がロシアに武器輸出を相次いで要請、ロシアの軍需産業はにわか景気にわいた。これに対し、イスラエルは世界に誇る無人航空機の対ロシア供与を話し合い、接近に成功。一方、ロシアはパレスチナとも引き続きの支援を約束したといわれる。

 イスラエルの株式指数は昨年だけで約50%も下落。空爆で更なる下落を続けている。その国内市場の状況に加えて、世界中の軍事産業の暗躍。中東和平がどんどん遠のく展開になってきた。

イスラエル総選挙 主な政党の獲得議席
カディマ     28
リクード     27
我が家イスラエル 15
労働党      13
シャス      11
ユダヤ教連合    5
国家統一党     4
ユダヤの家     3
メレツ       3
アラブ系     11 

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