クンビアを世界へ広めた、ソニデロの歴史を語る貴重な書籍が出版

書籍『Ojos suaves』とモレーロス ©Miho Nagaya

書籍『Ojos suaves』とモレーロス
©Miho Nagaya

1950年代から現在に至るまで、メキシコの下町=バリオの路上で息づくサウンド・システム、ソニデロ。メキシコで、クンビアをはじめとするトロピカル音楽を定着させた大衆文化の代表である。そんなソニデロを研究してきた、スイスの写真家、編集者のミリアム・ウィルスが、メキシコとコロンビアのサウンド・システム文化に迫った写真集『SONIDERO CITY』(2013)、ソニデロのフライヤーや、ロゴタイプをデザイン的に見せる『Panther’s Collection』(2014)に続き、最新著書『OJOS SUAVE – SOFT EYES』を2017年11月に発表した。
同書は、著者が、2009年からメキシコを度々訪れ、取材してきた、メキシコシティ、モンテレイ、プエブラ、サンルイス・ポトシ、レオンのソニデロ風景写真や、ソニデロたちへのインタビュー、各地で流行ったクンビアのタイトル・リストなど、貴重な資料が満載だ。メキシコにおいて、クンビアが、どのように発展し、根付いていったかが、理解できる内容となっている。現場のディープな空気を捉えた写真も素晴らしい。
同書は、ソニデロの発祥地、メキシコシティ国際空港近くのバリオ、ペニョン・デル・バーニョ出身の、ホセ・オルテガ(通称、モレーロス)によって生まれた企画であり、彼に捧げられている。モレーロスは、メキシコを代表するトロピカル音楽レコード・コレクターで、音楽プロデューサーでもある。1970年代より、兄のジャスミンとともに、メキシコのソニデロたちが使用するクンビアのレコードを購入するため、コロンビアやペルーを含む中南米を旅した人物であり、メキシコのコロンビア音楽の発展に多大な貢献をした。現在もメキシコシティの路上で、彼のレコード・コレクションを販売しており、海外からDJやバイヤーたちが、買いに訪れるほどだ。
2017年11〜12月にかけて、本書に掲載される各地で行われた出版記念発表会では、著者とともに、本書に掲載の資料部分を担当した、DJ、レコード・コレクター、音楽家のカルロス・イカサと、モレーロスも同行した。 メキシコシティで行われた発表会では、モレーロスによるDJもあり、粋な選曲で会場の皆を踊らせた。近い将来に、メキシコの全ソニデロを網羅した本を出版したいというモレーロスの希望もあり、このソニデロ・プロジェクトは、さらに続いていきそうだ。
(メキシコシティ●長屋美保)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年1月号に掲載されています。
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