「女性」をキーワードに紐解く カタルーニャ語圏の音楽の百年史

入場無料。 開館時間は月〜土 9 時から20時、日祝9時から14時半。

入場無料。
開館時間は月〜土 9 時から20時、日祝9時から14時半。

11月9日からカタルーニャ州の文化施設パラウ・ロベルトでは『D’ONES: (R)evolució de les dones en la música』展が開催されている。ソプラノのコンチタ・バディアやフラメンコのカルメン・アマヤ、アンパラノイアから12月にブルーノート東京での来日公演を控えたトランペット奏者アンドレア・モティスまで、歌手や作曲家、演奏家として活躍する女性ミュージシャンにスポットを当てて、この一世紀の音楽界の動きを振り返る展示だ。カタルーニャ語圏(カタルーニャ、バレンシア、バレアレス諸島)のジャンルを超えた音楽史を「女性」を切り口にして俯瞰する企画は今回が初めてということもあり、「Dones(女性)/ones(波)」「Revolució(変革)/evolució(変遷)」の言葉遊びが散りばめられたタイトルが示唆する通り、主催者側の既存の音楽史に揺さぶりをかけるという意図が伝わってくる展覧会だ。
会場はジャンルごとに①子守唄②フォルクローレ③クラシック&オペラ④大衆音楽⑤音楽&詩⑥シンガーソングライター⑦ジャズ&ブルース⑧ロック&パンク⑨ポップス⑩アーバンミュージックという10のスペースで構成され、主要なミュージシャンの足跡を音声や映像も交えて振り返ることができるという構成。本展に登場する女性の数は千人を超える。
スペインでは極めて保守的だったフランコ独裁政権に終止符を打った70年後半から、急速に女性の社会進出が進んだ。こうした社会状況の変化は音楽界の数字にもはっきり現れており、女性がメインの音源の制作はこの50年で10倍以上に増加した。1960年代の10年間ではLPとEPを合わせても200枚程度に過ぎなかったが、2016年だけで150を超える作品が発表された。同様に、2016年の時点で主要フェスの出演者に女性が占める割合は平均26%と英米のフェスの平均17%を大きく上回る。
このように、本展は男性中心の構造という批判がある音楽界において今まで脇役の立場に置かれてきた女性の功績を適切に評価する試みであると同時に、「女性の声」によって大きく変化してきたスペインの社会の歩みの記録でもあり、大変興味深い内容となった。来年4月23日までの会期中にバルセロナを訪れる方は、立ち寄ってみてはいかがだろうか。会場はバルセロナを訪れる人なら誰もが一度は通るグラシア大通りにあり、同じ建物には観光案内所も入っている。
(バルセロナ●海老原弘子)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年1月号に掲載されています。
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