メキシコ中部地震直後のメガ・コンサート開催に民衆が激怒

メガ・コンサート告知の上に、「このイベントに行く奴は本当のバカだ」と書かれたSNS投稿が大拡散された

メガ・コンサート告知の上に、「このイベントに行く奴は本当のバカだ」と書かれたSNS投稿が大拡散された

2017年9月7日、メキシコ南部オアハカ州、チアパス州で起こったマグニチュード8.1のメキシコ南部地震(チアパス州震源)と、その約1週間後の9月19日に、モレーロス州、プエブラ州、メキシコシティで起こった、マグニチュード7.1のメキシコ中部地震(プエブラ州震源)は、少なくとも362人の死者を記録し、メキシコの人々に暗い影を落とした。だが、一方で、民衆の力を思い知らせた出来事でもある。建物の倒壊現場で、率先して救援活動を行ったのは、メキシコの市民たちであり、政府や軍のような体制側よりも迅速であった。
奇しくも今回の中部地震は、1985年9月19日にメキシコシティで起こった大地震と同日に起こった。1985年の地震では、1万人近くの死者数を記録し、震災後に政府が規定する建築基準が強化された。にもかかわらず、今回の震災では、1985年以降に建てられた建物であっても、倒壊や、半壊する事例が多く見られる。震災から20日経過した現在も、市民たちは、いつ建物が壊れるかもわからない不安を感じながら暮らしているのだ。これは、デベロッパーの多くが、集合住宅を、建築基準に満たない建材によって、ローコストで建造し、それを、行政側が賄賂を受け取って、基準をクリアしていると認可したため、脆い違法建築が乱立された結果である。
市民たちが、救援活動や、被災地へ物資を届けるのに必死になっているなか、その物資を、軍や行政が権力を盾に、強奪する例がまかりとおっている。政治家たちは、この災害を2018年の選挙キャンペーンのために利用しようと躍起だ。メキシコシティ政府も、その例にもれず、2017年10月8日、中心部のソカロ大広場にて、約17万人参加のメガ・コンサートを開催。フアネス、チャヤン、フリエタ・ベネガス、エンリケ・ブンブリなど、内外のスターが出演した。企画したメキシコシティ側は、「震災で支援のために活躍した市民に、この無料コンサートで感謝の気持ちを伝えたい」と発言した。行政側の悪事をうやむやにして、娯楽でお茶を濁そうとする姿勢に、反発する市民も多い。メキシコの人気ロック・バンドのカフェタクーバとモロトフや、カジェ13のレジデンテは、それを察してか、出演を直前に辞退した。震災で家を失った住人たちは、政府が提供した避難所から、2週間ほどで追い出され、路上にて暮らしている。世界じゅうから集まった5600万ドル以上の義援金は、どこに消えているのか?
(メキシコシティ●長屋美保)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ11月号に掲載されています。
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