アントニオ・ザンブージョ 来日公演後も精力的に活動

コリゼウ・ドス・レクレイオスでのライヴ告知ポスター

コリゼウ・ドス・レクレイオスでのライヴ告知ポスター

兵庫、静岡、東京など各地で行った来日公演も大盛況のうちに幕を閉じたアントニオ・ザンブージョ。日本の観客達からの賞賛の声も止まぬ中、ポルトガルに帰国し精力的に活動を続けている。
まずは先月21日、首都リスボンでのソロコンサート。この公演は本来6月末開催の予定であったものが、ザンブージョの父の死去によりに急遽日本ツアー後に延期されたもので、会場はリスボンの武道館ことコリゼウ・ドス・レクレイオス。ポルトガルのアーティストにとってこの歴史ある会場で演奏するのは名誉なことだが、昨年同会場でのほぼ連続18公演をソールドアウトさせたという前代未聞の記録を持つザンブージョにとってはお馴染みの場所だ。今回のコンサートのテーマは昨年発表した最新作『Até Pensei Que Fosse Minha』。シコ・ブアルキの楽曲で構成されたこのアルバムにはホベルタ・サーとカルミーニョも参加しており、ザンブージョとブラジル音楽の深い関係が結実した一枚だ。
何故シコ・ブアルキを選んだのか?という地元紙の取材に対し、ブラジルの音楽家達の名前を次々と挙げる回答からも、その憧憬の程が窺い知れる。
「衝動的に選んだし、他のアーティストでもよかったんだ。好きな作曲家は沢山いるしね、ジョアン・ジルベルトとか。彼を通してボサノヴァ以前~以降のブラジルの偉大な作曲家達を知ったよ。ノエル・ホーザ、カルトーラ、そしてオルランド・シルヴァやピシンギーニャのようなね。ああ、ルピシニオ・ロドリゲスの楽曲を集めた、アドリアーナ・カルカニョットの素晴らしい作品もあるね。あれはよく聴くよ。これらの作曲家達へのオマージュ作品でもよかったかもね。」
他のリリース関連では、6月末に発表されたデヴィッド・ボウイ追悼トリビュートアルバム、『Bowie ‌70』において「ライフ・オン・マーズ」のカヴァーで参加。珍しい英語詞で流麗な歌声を披露している。
秋まではリスボンで開催されるファド・フェスティバル、カイシャ・アルファマへの出演をはじめ、国内外での公演が続くが、年末には既に新作か、新しいプロジェクトに向けて動き出す予定とのこと。
アレンテージョ地方の伝統音楽、カンテ・アレンテジャーノからファドの世界へ入った彼の音楽は、アレンテージョとリスボン、ポルトガルとブラジル、ファドとMPBを優しく滑らかに繋いていく。次はどんな橋を架けるのか、どんな人や音楽を繋いでいくのか、目が離せない。

(ポルトガル●山口詩織)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ9月号に掲載されています。
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