マルー ・マガリャンエスの新MV 人種差別だとして追求される

マルー・マガリャエンス

マルー・マガリャエンス

2007年にサンパウロの一人の少女が自作曲をインターネットのマイスペースに投稿。その曲がたちまち脚光をあびることになった。マルー ・マガリャンエスは当時まだ15歳。翌年には数々の音楽フェスティバルに出演し、マスコミや批評家に注目された。ネットでマルーを見たマルセロ・カメロ(ロス・エルマノスの元ボーカル)は彼女に一目惚れ。彼女のライブに行き、自分の最初のソロアルバムのゲストに招待。当時30歳のマルセロと付き合い始めたマルーはまだ16歳。それからマルーはアルバムを発表したり、マルセロと共にバンドを結成して活動しながら、ポルトガルに住んでいる。
そんな順調なキャリアを歩んできた彼女だが、5月に発表したビデオクリップが人種差別ではと論議を呼んでいる。新曲名は「Você não presta(あなたは価値がない)」。差別だという人の意見は以下の通り。歌詞は、「私のフェスタにみんなを呼ぶわ。でもあなただけは呼ばない、価値がないから、私の領域に入らないで」となっている。ビデオには、白人のマルーを手前に数人の黒人のダンサーたちがバックで踊る。マルーは服を着ているが、ダンサーたちはボディーが見える軽装で、男性は上半身裸のものもいる。身体はオイルが塗られているが、昔奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人たちは、健康そうに見せるために身体にオイルを塗られていたらしい。彼らが踊る舞台は、レンガの壁という質素なつくり。ダンサーたちが階段で踊るシーンがあるが、彼らの手前は網があり、鉄格子の中に閉じ込められている様子を思わせる。白人が黒人たちのステレオタイプな身体や踊りを単に利用しているだけだという視点だ。マルーの件に限らず、今まで黒人の存在を散々否定してきた白人たちが、今では黒人のエキゾチックな部分だけに注目してそれを金稼ぎに利用しているという論調が、人種差別反対主義者たちの意見から結構きかれている。
一方、ビデオには、差別意識が全くみえないという反論も多い。予想しなかった出来事にマルーは、自分のフェイスブックでビデオクリップで気分を害した人たちに対して謝罪した。ダンサーを選択したのは、肌の色で判断したわけではないと弁明していた。だが、彼女はテレビ番組でこの新曲を歌う際、「これは白人がサンバを歌ってはならないと差別する人たちのためのものよ」といったことで、これまた反響が再発した。無意識に起こした行動が結果的に差別していることがあるという意見も多く聞かれる。
実際に差別された人たちの被害者意識が強いケースもあるが、差別された経験のない人には、彼らの本当の気持ちがわからないかもしれない。少なくとも昔より差別問題が活発に論議されている風潮が強いと感じとれるブラジルの今日この頃である。
(バイーア●北村欧介)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ8月号に掲載されています。
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