スーパーMCグループ、リングワ・フランカが本格始動

左からラエル、エミシーダ、ヴァレーテ、カピクア

左からラエル、エミシーダ、ヴァレーテ、カピクア

カピクア、ヴァレーテ、エミシーダ、ラエル。ポルトガルとブラジル、二つの国の四人のラッパーによるスーパーグループが遂に動き出した。その名も「リングワ・フランカ」。
グループ結成とプロジェクトの始動が発表されたのは昨年だが、それ以降音源の公開や進展の様子が報じられず立ち消えかとの噂もあったが、遂に先月31日に先行シングル『Ela』がYoutubeで公開された。
カピクアとエミシーダのコラボレーションの話から膨らんだこのプロジェクトの紅一点、カピクアことアナ・フェルナンデスはポルト出身の女性ラッパー。当欄でも何度か取り上げてきた、男性ラッパー主体だったポルトガルのHIP HOPシーンにおける革命的な存在で、ジゼラ・ジョアンをゲスト・ヴォーカルに迎えたトラック『Soldadinho』のヒットも記憶に新しい。
そしてもう一人の中心人物エミシーダは言わずと知れたブラジルのHIP HOPシーンを牽引する存在。DJグループのオレーリャ・ネグラ、ラッパーのサム・ザ・キッド、女性SSWマルシアとのコラボレーションをはじめ、ポルトガルのミュージシャンとも積極的に交流しており、ポルトガルの音楽ファンからも注目されている。
このグループ名である「リングワ・フランカ」は、本来の言語学的な用法では「共通の母語を持たない者や集団同士が意思疎通のために用いられる共通語」の意味であり、ポルトガル語という共通の母語を持つこの四人のラッパー達の言語を指す単語としては適切でない。それでも敢えてこの語をグループ名に冠した理由は、シングルに先駆けて公開されたインタビュー映像でのエミシーダのこの発言から窺い知ることができるだろう。
「それぞれがやっている音楽で、ふたつの国をもっと近づけることが出来るんじゃないか、とふと頭に浮かんだんだ。発信して発信して、受け取って受け取ってという一方通行ではなく、もっと多くの人を巻き込んでお互いの情報を反映していくようなものを僕達は作っている、そう思ってるんだ。」
すでに完成済みというファーストアルバムは、リスボンとサンパウロの二都市で作業が行われ、ポルトガル側のプロデューサーはオレーリャ・ネグラのメンバーでもあるフレッド・フェレイラ、ブラジル側でのプロデューサーはカシンとネーヴ、とクレジットされている。二カ国に跨ったその制作プロセスも含め、5月リリースが予定されているアルバムの続報を待ちたい。
(ポルトガル●山口詩織)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ5月号に掲載されています。
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