強く自由な女たちに揺さぶられつつあるメキシコ社会

ピロポ撲滅活動で一躍時の女性となったレポーター、ブロガー、タマラ・デ・アンダ。 © MIHO NAGAYA

ピロポ撲滅活動で一躍時の女性となったレポーター、ブロガー、タマラ・デ・アンダ。 © MIHO NAGAYA

人気テレビ・レポーター、ライター、ブロガーのタマラ・デ・アンダが、メキシコシティ路上で、タクシー運転手に「Guapa(いい女)」と叫ばれたことを、性的侮辱と抗議し、警察へ突き出したことがあると、2017年3月にツイッターで発言した。メキシコでは、かねてから男性たちが、通りすがりの女性に対し、声をかける「ピロポ」という悪習があるのだが、卑猥な言葉を投げかけることもあり、快く思う女性は、ほとんどいない。タマラのピロポ撲滅行動には、よくやったという肯定派と、過剰抗議だという反対派に別れ、物議を醸している。この騒動で、彼女のブログやYoutubeチャンネルの購読は一気に増えた。売名ともささやかれるが、男性至上主義を続けるメキシコ社会へ一石を投じた点では、画期的であった。

じわじわと、女性の自由の到来を感じるメキシコ。2015年には、フェミニズムをテーマにした文化フォーラム『プント・ゴサデラ』もオープンした。今まで、女性をテーマにした文化センターはあったが、ゴサデラは、オルタナティヴな視点が特徴。女性たちによるヒップホップ、パンク、ロックなどのコンサート、パフォーマンスアートなどの、イヴェントを頻繁に行い、若い層からも注目を集めている。

そんななか、1968年の全国学生運動の元リーダーであり、現在は、メキシコ国立自治大学(UNAM)で科学を教えるジャーナリスト、マルセリーノ・ペレジョ・バルスが、同大学ラジオ局での自身の番組「El sentido contrario」放送中に問題発言をした。2015年にベラクルス州で未成年女子が、若者グループにレイプされた事件(加害者グループの一人は、被害者の女性器に指を入れただけだということから、釈放された)について、「ほうきの柄や、指を入れたくらいでは、強姦ではない」と言ったのだ。性差別であり、被害者を侮辱する発言として、UNAMは、公式文書にて、同氏の番組を打ち切ると発表した。SNSでも、マルセリーノへの抗議は殺到し、かつての、左派ヒーローは、地に落ちた。

国連発表によれば、メキシコでは2013〜2015年だけでも、6488人の女性が殺されていて、性差別暴力事件が後を立たない現実がある。だから、女たちは、疎ましがられようが、大声をあげて、存在や権利を主張しなければいけない。性別の差などなく、お互いを自然に受け止められるような社会を作るためにも。

(メキシコシティー●長屋美保)


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