メキシコの伝統音楽レーベル、ディスコス・コラソンの音源がユネスコに登録

伝説のバイオリン奏者、フアン・レイノソの楽団。 1972年の写真。©DISCOS CORASON

伝説のバイオリン奏者、フアン・レイノソの楽団。
1972年の写真。©DISCOS CORASON

メキシコ伝統音楽や、アフリカ、カリブの音楽を配給する、メキシコのインデペンデント・レーベル、ディスコス・コラソン。メキシコ出身の音楽プロデューサー、エドゥアルド・ジェレナスと、ブエナビスタ・ソシアル・クラブや、アリ・ファルカ・トゥーレのリリースで知られる英国のレーベル、ワールド・サーキットの創設者の一人である、マリア・ファルカーソンにより、メキシコシティで1992年に創設された。メキシコを代表する歌手、チャベーラ・バルガスの、晩年のアルバムをリリースすることでも知られ、ワールド・サーキットのメキシコでの流通を担い、質の高い世界の音楽を国内に広めるとともに、国内の伝統音楽の復興にも貢献している。

同レーベルの代表である、ジェレナスは、エンジニアのエンリケ・ラミレス・デ・アレジャーノ、バルフ・リーベルマンとともに、1970年代より、メキシコ各地で、さまざまな伝統音楽を録音した音源を、CD化してきた。そのうちの、1970〜1983年に録音された音源が、ユネスコの「世界の記憶2016」(「世界の記憶」とは、歴史的な記録物の保護や普及を目的に、2年ごとに選ばれる)の一部として登録された。このメキシコの音源は、祭りや、農村で歌われ、奏でられている音楽を、当時としては、最高水準で録音を行った、貴重なものであり、現在、国立音源アーカイヴ・センターである、フォノテカ・ナシオナルに保存されている。

彼らが、録音し、アルバムとして発売したことから、国際的に名の知れるようになったアーティストや、グループは数知れない。そのカタログ数は、100以上におよぶ。ソン・ウアステコの代表グループ、ロス・カンペーロス・デル・バジェや、1972年にアルバムを発表し、その30年後に国の文化科学栄誉賞を授与された、バイオリン奏者のフアン・ レイノソ、ソン・ハローチョのアルパ奏者、歌手のラ・ネグラ・グラシアーナなどの至宝を、世に送り出してきた。

現在、ディスコス・コラソンでは、過去の伝統音楽だけでなく、新世代アーティストの発掘も行っていて、バルカン、ジプシー音楽テイストを取り込んだ、オアハカの若きブラス楽団、パサトノ・オルケスタや、ゲレロ州の10代で艶やかなボレロを歌う姉妹デュオ、エルマーナス・ガルシアなどは、とても興味深い。末長く、メキシコの素晴らしい音楽を、届け続けて欲しい。

(メキシコシティ●長屋美保)


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