Hip-Hopスター、ワイクリフ・ジョンが、5日(木)ハイチに飛び、来る11月のハイチ大統領選立候補の登録を正式に行った。ハイチでは、彼の立候補に、にわかに期待が高まってきている。
ハイチの首都ポルトー・プリンスの選挙管理事務局前の大通りには、「Fas a Fas(Face to Face)」とクレオール語のロゴが書かれた赤と白のTシャツを着たファンが集まり、事務局への届け出を見守った。
「バラク・オバマ大統領に、合衆国にはオバマが、ハイチにはワイクリフ・ジョンがいると申し上げたい」。とワイクリフは党員の前で挨拶。
「きっとクレオール・Hip-Hopが流れると踊る唯一の大統領になるよ」と、選挙管理委員会へ立候補をするに当たって必要な書類を提出した後の挨拶ではユーモアを交えて語った。立候補の受付は今週日曜日に締切を迎える。
同委員会は、候補者の承認/否認を8月17日までに決める予定だ。
Viv Ansanm党責任者のダニエル・ジャン・ジャキスは、Reuters通信に11月28日のハイチ大統領選にワイクリフが、同党の候補として出馬すると話した。
40歳のシンガー、ワイクリフに立候補の経験は全くないが、自分のアイデンティティーを常に意識してきた彼、ハイチでは尊敬され、誰もが知るアーティストとなっている。
ハイチに生まれ、NYに移住、のちにニュージャージー州のニューアークに暮らしたワイクリフは、元フージーズ(Refugees=避難民/亡命者の略語)のリーダーで、グループでの成功を収めた後、ソロ活動に転向。アーティスト、プロデューサーとして数々の作品を世に送り出し、その都度話題をさらってきた。
同時に慈善事業にも力を注ぎ、「Yele Haiti」を設立。今年1月12日にハイチを襲い300,000人もの犠牲者を出したハイチ地震のあとは、国際的な支援を「Yele Haiti」を通じて呼びかけ、いち早く支援活動に乗り出した。
同震災の傷跡はまだ癒えておらず、現在もテント暮らしをやむなくする人々が多くいる状態だ。
多くの分析者はワイクリフが次回大統領選挙で勝つであろうと分析している。選挙管理事務局の外に集まっていた群衆の中の一人は「彼の立候補が承認されれば、次期大統領はワイクリフだろうね」とコメントした。
現大統領レネ・プレヴァルは再選が禁止されているため次の大統領選には出れず、地震後の復興対応の遅さや、被災者への対応に批判が集中している。多くの国民が、1日2ドル以下の収入で暮らしているといわれるハイチだが、地震の後「今までで一番ひどい状況」におかれていると専門家からも指摘されている。
ハイチにはワイクリフ立候補への期待が渦巻いているが、フロリダの政治学教授ガマーラの分析では、基礎構造が脆弱な一国をコントロールする程の経験の不足を指摘し、「次期大統領が誰になったとしても、素晴らしいディレクターでなければ務まらないだろう」とコメントした。
現在までに立候補登録をしている候補者は、5名。立候補の動機を尋ねられたワイクリフは、タイム誌に「私の人生のうちの5年間を、大統領として母国に捧げられないなら、今まで私が歌ってきた全ての曲は空々しい戯言だ」と述べている。m