「タンゴにはずっと敬意を抱いてたんだ。他のタンゴの要素よりもまず演奏について考えてみた。ナメてるとこてんぱんにされることもあるって知っていたからね」と語るのはマドリードのフラメンコ歌手のディエゴ・エル・シガーラ。今回は最新作『シガーラ&タンゴ』について語った。
「自分に挑みかけてきていたテーマがあったし、何より求めていたものは、これだけ力強い二つのジャンルの比較を楽しむことだったんだ。他のジャンルから新しいジャンルへやってくることの利点は、違ったスタイルでできるということ。もし自分がアルゼンチン人だったなら確実にもっとお堅いものに縛られていただろうと思う。でもフラメンコの人間だということは、もっと派手にできるんだ。言うならばプールに飛び込むようなものだね。びしょ濡れになるってことはいいことなんだ」
ディエゴ・エル・シガーラ/シガーラ&タンゴ
(Universal/CD+DVD/UN 2762062) ※4月最新入荷!絶賛発売中!
本作でシガーラは、ギタリストのフアンホ・ドミンゲスとバンドネオニスタのネストル・マルコーニの参加を考えた。この二人ともを絶賛した。また同様に、曲を一緒に録ったアンドレス・カラマロのことも褒めた。「カラマロがタンゴをやっているのを聴いてそれもまた刺激になったんだ。タンゴをやりたいと思ったよ。ボレロとアフロ・キューバの違いみたいに、タンゴはそれほど韻律を使った詩から離れないんだ。でも僕はもっと色付けをしてもいいと思っているんだけどね。」
シガーラはまくし立てる時もあれば、また、この瞬間にこの世で唯一交わされてる会話かのように集中していた。ささやくように話したり、聞き手の想像力をかき立てるように鼻歌を歌ったりもした。止むことなく話は続く。
「マルコーニは僕と知り合う前は、僕のことを65歳くらいのジプシーだとおもっていたらしいんだ。僕を見たとき、彼はおどけていたよ。でもすぐに、生まれてきたときから知っていたかの仲になったんだ。」
ーあんなにあるレパートリーの中から11曲を選ぶのはどうでしたか?
「寝ないで何日もYOU TUBEと向き合う日々だったよ。タンゴの曲をそれぞれ4バージョンずつ聴いたんだ。ここを、胸の中を打たれた時、痛みを感じた時だね、にそれを選んだんだ。」
インタビューの半ばでシガーラはたばこを一本吸いたがり、ハーブティーを飲み、ちょっとした休憩を望んだ。レアル・マドリード(彼の応援しているチームだ)の最近の試合についてもコメントし、彼がツアーで回った都市の名前なんかも挙げたりした。それぞれの都市に思い出があり、彼を熱狂的にさせたり、感情的にさせたりするようだ。こういう感情はすべて、自然だったり、彼が持っている指輪やブレスレットがもたらしてくれる。
ーおじさんのラファエル・ファリーナもタンゴを歌っていたけど、影響はあったの?
「叔父もコンチャ・ピケルの仲間とブエノス・アイレスに来たんだ。船だったから、来るのに3ヶ月もかかったんだよ。マドリードに帰ってくるときにいくつかレパートリーにするタンゴを持ち帰ったんだ。僕は8歳の時だったって記憶してるよ。それでその一つを舞台で観たんだ。タンゴの衣装を見て「僕もあれクリスマスにほしい」なんて言ったんだ。あの当時は誰もフラメンコの人間はこんな風に、このスタイルでは歌わなかった。歌手のカマロン・デ・ラ・イスラを見たときは、彼が僕の中のスーパーマンになったね。そして、これが人生だよね、40歳になった終いにはここにいて、全曲タンゴのアルバムを出しているんだからね。この作品を作る前はこの考えは頭の中にあって、家で歌ったりして過ごしていたんだよ。スペインにいたと時は皆に俺の頭がおかしいって言われてた。でも、もしやってみなければ、退屈していたと思うよ。ステージでも同じこと。がんばらなくちゃ。」
シガーラはジプシーのエネルギーで彼らのプロジェクトを語ってくれた。プロジェクトの一つはサルサのオスカル・デ・レオンとやって、もうひとつはメキシコの民謡楽団とやるそうだ。
「シンフォニー楽団とフラメンコをやることもいいなと思っているんだ。ピカソが言ってたみたいに、探さないで、出会うんだ。いい味のある音を出すために、いつでも何かをしなくちゃいけないんだ。」と語った。Sa