‘ニュース’ カテゴリーのアーカイブ

今秋来日するジョイスが、今回ゲストに迎えるのはシコ・ピニェイロ!

2018年7月27日 金曜日

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デビュー50周年を迎えるブラジリアン・ミュージックの女王が、若き天才ギタリスト/シンガーを迎えて贈る極上のステージ

​ 「フェミニーナ」、「或る女」など数々の代表曲を持つ“ブラジリアン・ミュージックの女王”、ジョイス・モレーノのデビュー50周年を記念するスペシャルな公演が行われる。しかも今回は、ダイアン・リーヴス、ボブ・ミンツァー、ジョアン・ボスコ等との共演でも知られるサンパウロ出身のギタリスト/シンガー、シコ・ピニェイロをゲストに迎えたステージだ。リオデジャネイロ出身のジョイスは’68年に初ソロ・アルバムを発表。ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライスら数々の巨星と交流し、暖かな歌声と軽やかなギターで世界中のファンを魅了してきた。サンバ、ボサ、MPB、ジャズへの愛に満ち溢れた一夜となるだろう。

2018. 9.30.sun & 10.1.mon @コットンクラブ
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/joyce-moreno/

2018. 10.4.thu & 10.5.fri @ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/joyce/

JOYCE MORENO with special guest CHICO PINHEIRO
“celebrating 50th anniversary of debut”
ジョイス・モレーノ・ウィズ・スペシャル・ゲスト・シコ・ピニェイロ

メンバー:Joyce Moreno (vo,g), Chico Pinheiro (vo,g), Tutty Moreno (ds), Helio Alves (p), Rodolfo Stroeter (b)

中原仁氏監修の「21世紀ブラジル音楽ガイド」(ele-king books)が発売になりました!

2018年7月25日 水曜日

本書は、21世紀のブラジル・ポピュラー音楽にフォーカした、ブラジル音楽の「今」を知るためのディスクガイドブックです。今世紀に入って頭角を現した世代の音楽家を軸に、現在進行形のブラジル音楽を紹介していきます。
(「21世紀ブラジル音楽ガイド」、「はじめに」より)

中原仁さん監修によるブラジル音楽全般を対象としたガイド本としては、2001年に発売された「ブラジリアン・ミュージック2001」(1995年に発売された「ブラジリアン・ミュージック」の続編)以来となり、待望の1冊が満を持して登場しました。

当方、大学生のときに「ブラジリアン・ミュージック2001」が発売されて、洋楽・邦楽ロックを経てカエターノ・ヴェローゾとマリーザ・モンチに出会いブラジル音楽に入った自分にはドンピシャな内容で、「ブラジリアン・ミュージック」と「同2001」を様々なブラジル音楽と出会う指針にさせていただきました。

以前(10年くらい前?)に「〈ブラジリアン・ミュージック2001〉の続編は出されないんですか? 」と中原仁さんにうかがったことがあるんですが、その時は、「次の世代の人が作ればいいんだよ」とおっしゃっていらっしゃいました。でも、結局は、中原仁さん以外にまとめられる人がいなく、30歳前半〜50代前半の書き手をまとめて、中原仁さんが「21世紀のブラジル・ポピュラー音楽にフォーカした」ガイド本を上梓されました。(中原仁さん以外の書き手は「ブラジリアン・ミュージック」シリーズと重なっていない! というのもすごいことだなあと)

中原仁さんの作られるガイド本は、ブラジル以外の音楽を音楽好きとしての入り口にもつ人が、ブラジル音楽との様々な出会いを持つのに相応しく設計されていると思います。当方がそうだったように。

勝手に本書を読んで欲しい人について語ります。ブラジル音楽に興味があって色々聴き漁りたいと思っている人はもちろんですが、コーネリアスや菊池成孔、くるり、ceroといったアーティストのファンで、彼らがブラジル音楽を愛好していることをなんとなく知っている人が、現在進行形のブラジル音楽に魅了されるきっかけになれば、一番ハッピーなんじゃないかと思います。

目次
◆CHAPTER 01 +2とリオのインディー・ポップ
◆CHAPTER 02 ノヴォス・コンポジトーレスとサンパウロ・シーン
◆CHAPTER 03 ミナス新世代
◆CHAPTER 04 MPB
◆CHAPTER 05 Samba Soul / Funky Groove / Urban
◆CHAPTER 06 Hip Hop / Funk / Drum’n Bass / Electro / Reggae / Street Beat
◆CHAPTER 07 Bahia(バイーア)
◆CHAPTER 08 Nordeste & Norte ノルデスチ(北東部)とノルチ(北部)
◆CHAPTER 09 Rock / Folk & Country
◆CHAPTER 10 Samba
◆CHAPTER 11 Instrumental
◆CHAPTER 12 90’s 世代
◆CHAPTER 13 Maestro, Legend
◆CHAPTER 14 International

監修:中原仁

筆者(50音順):伊藤亮介、江利川侑介、KTa☆brasil、佐々木俊広、宿口豪、高木慶太、橋本徹、花田勝暁、堀内隆志、村田匠

編集:野田努(ele-king books)

装丁:渡辺光子

192ページ、全4色

発行:株式会社Pヴァイン(ele-king books)

定価:2,646円(税込)

刊行:2018年7月25日

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同時リリース CD「Musica Brasileira No Seculo 21(21世紀ブラジル音楽)」

P-VINE PCD-20398
2018年7月25日発売
定価 2,000円+税
監修・選曲・解説:中原仁

[収録曲]

1. Moreno Veloso / Um Passo a Frente
2. Domenico Lancellotti / Insatiable
3. Kassin / Relax
4. Nina Becker / Acrilico
5. Ana Claudia Lomelino / Colo do Mundo
6. TONO / Da Bahia
7. Bruno Capinan / Promessa
8. Luana Carvalho / Oxum Minha Mae
9. Joao Sabia / Nossa Copacabana
10.Tulipa Ruiz / Efemera
11.To Brandileone, Ze Luis Nascimento / Eu Sou Outro
12.Pedro Viafora / Feliz pra Cachorro
13.Dani Black / Seu Gosto
14.Vanessa Moreno / Zimbadogue
15.Tatiana Parra / Depois
16.Cesar Lacerda / Me Adora
17.Alexandre Andres & Rafael Martini / Tamarindo
18.Joana Queiroz Quarteto / Martin,Camilo y Juan
(全18曲、74分)

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(文責:花田勝暁[月刊ラティーナ編集長])

ペドロ・ミランダ with グルーポ・カデンシア ジャパンツアー2018

2018年6月21日 木曜日

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サンバ新世代の旗手ペドロ・ミランダがリオから来日、日本最高のサンバ・バンド、グルーポ・カデンシアと共演する【Pedro Miranda with Grupo Cadência Japan Tour 2018】。
6月28日から始まります。

http://pedromiranda.jugem.jp/

6/28(木)鎌倉 cafe vivement dimanche
※残席あり

6/29(金)東京 プラッサ・オンゼ
※立ち見残り10名少々で満員札止め

6/30(土)大阪 Chove Chuva
※満員札止め、予約受付終了。

7/1(日)名古屋 オキナワAサインバーKOZA
※残席あり

7/4(水)東京 プラッサ・オンゼ
(Roda de Samba com Pedro Miranda)
楽器持参で参加可
立ち見での案内

7/5(木)東京 晴れたら空に豆まいて
(Rio→Tokyo Special Samba Night)
Bloco Quer Swingar Vem Pra Cáも出演
立ち見での案内

ペドロ・ミランダ(vo, pandeiro)from Rio de Janeiro
グルーポ・カデンシア:宮澤 摩周(perc)尾花 毅(violão de 7 cordas)ダリオ・サクモト(cavaquinho)土井 徳浩(clarinet,sax)+ 和田 充弘(trombone)

ご予約はお早めに!

http://pedromiranda.jugem.jp/

8月4日(土) 《身をまかせてベネズエラ リズムと彩りの祝祭》

2018年6月21日 木曜日

ビラ表面

音楽は、あなたを「異世界」へと連れ去る魔法です。コンサートにおいて、演者たちは持ち味や色を出しながら自分を見せます。とんがる個性の衝突と融合により、グルーヴが生まれ、リズムには魂が宿ります。初めて聴くのに、自然と体がノってしまう。気がつくと、そこは「異世界」。これぞ、音楽の魔法です。
このコンサートで表現する「異世界」は南米の国ベネズエラです。音楽に身をまかせた途端、あなたを囲む魅惑の世界が立ち現れます。「その世界にとび込みたい」と陶酔への衝動が身体をかけめぐります。みずからとび込んでみれば、魔法は、「異世界」との真の出会いへと昇華するのです。

イベント名
身をまかせてベネズエラ リズムと彩りの祝祭

日時
2018年8月4日(土) 開場14:30 開演15:00 終演予定16:30

会場
東京大学駒場Iキャンパス18号館ホール(〒153-8902 目黒区駒場3-8-1)
京王井の頭線 駒場東大前駅(東大口)より徒歩5分
JR線 渋谷駅、小田急線 代々木八幡駅/代々木上原駅、千代田線代々木公園駅より徒歩18分(タクシー1メーター分)
※駐車場はございませんので、公共交通期間をご利用ください。
入場無料・予約不要

演奏曲目
村娘 / Campesina(ホローポ)
我が平原は楽園 / Mi llano es un paraíso(ホローポ)
星の涙 / Como llora una estrella(バルス)
平原の魂 / Alma llanera(ホローポ)
アマリア・ロサ / Amalia Rosa(ゴルぺ・ラレンセ)
コーヒールンバ / Moliendo café (サルサ)
グアヤナ・エス / Guayana es(カリプソ)
恋の酸っぱいしずく / Acidito(メレンゲ)
エロルサの祭り / Fiesta en Elorza(パサーへ)
スンバ・ケ・スンバ / Zumba que zumba(ホローポ・レシオ)
ある元漁師の履歴書 / Constancia de un pescador(デシマ)
身をまかせて / Deja que te lleve(ソン・アドレナリーナ)

webサイト
https://goo.gl/5RbCm2
Facebookページ
https://www.facebook.com/events/1696562730440451/

ビラ裏面

ラ・フォル・ジュルネTOKYO、オススメのアーティスト紹介!

2018年4月25日 水曜日

ゴールデン・ウィーク中の5月3〜5日、丸の内エリアと池袋エリアで、フランス発祥のクラシック音楽祭ラ・フォル・ジュルネTOKYO(LA FOLLE JOURNEE TOKYO 2018)が開催されます。
今年のテーマの「UN MONDE NOUVEAU(モンド・ヌーヴォ─新しい世界へ)」のもと、世界各地からアーティストが集います。
今回、見逃したくないワールド・ミュージック的なアーティストを3組紹介します。

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【バックを務めるスウェーデン・ジャズ界の精鋭! 世界屈指のスター・ソプラノ歌手がブルースの名曲を歌う】

バーバラ・ヘンドリックス(Barbara Hendricks)「Road to Freedom」

_Hendricks-Barbara©Mats-Bäcker

■アメリカ出身。幼少期から牧師の父の教会で黒人霊歌を歌う。屈指のスター・ソプラノ歌手として世界中の歌劇場から招かれる傍ら、1994年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルへのデビューを機にジャズにも進出。近年、黒人奴隷たちの宗教歌に由来するブルースを、自身の公演で頻繁に取り上げている。
LFJ2018では、「Road to Freedom」と題し、ブルースの名曲を絶唱。バックを務めるスウェーデン・ジャズ界の精鋭達(ハモンドオルガンのマティアス・アルゴットソン、ギターのマックス・シュルツとウルフ・エングランド)の演奏にも注目!

[出演公演]
T115 :5/3 18:30~19:30 東京芸術劇場コンサートホールS¥2,500/A1,500
M244:5/4 15:30~16:30 東京国際フォーラムホールC S¥3,000/A2,500 (完売)

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【軽やかさ、繊細さ、深い教養。フランスを拠点に活動する新世代のシンガーソングライター】

ピアース・ファッチーニ(PIERS FACCINI)
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■イタリア人とイギリス人の両親のもと、ロンドンに生まれ、現在はフランスを拠点に活動する新世代のシンガーソングライター。レナード・コーエンを尊敬するファッチーニは、軽やかさ、繊細さ、深い教養を湛え、さまざまな非西洋音楽からの影響を受けた独創的な音楽スタイルを生み出している。絵画や写真撮影も得意とし、自身のアルバム・ジャケットやミュージック・ビデオのデザインを手がけるなど、マルチな才能に恵まれている。



[出演公演]
M127:5/3 21:30~22:15 東京国際フォーラムホールB7 ¥2,800
M224:5/4 15:30~16:15 東京国際フォーラムホールB7 ¥2,800
T334 :5/5 16:30~17:15 東京芸術劇場シアターウエスト¥2,000

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【クレズマー音楽を得意とするクラリネット奏者が、凄腕のストリング・カルテットと共演】

Yom&Quatuor IXI (ヨム&クアチュール・イクシィ)
_Yom-&-Quatuor-IXI©Laurent-Benhamou

Yom:クレズマー(東欧系ユダヤ)音楽から、ロック、ブルース、フォーク、カントリー、さらにクラシックに至るまで、多様なジャンルを縦横無尽に行き来するヴィルトゥオーゾ・クラリネット奏者。

Quatuor IXI:1994年設立。コンテンポラリー・ジャズを得意とする凄腕のストリング・カルテット。

[出演公演]
M123: “Illuminations” 5/3 14:00~14:45 ホールB7 ¥2,800
T136 : “Illuminations” 5/3 20:45~21:30 シアターウエスト¥2,000
M226: “Illuminations” 5/4 19:00~19:45 ホールB7 ¥2,800
M323: “Illuminations” 5/5 14:00~14:45 ホールB7 ¥2,800

メキシコシティへの愛を込めたガエル約10年ぶりの監督作品

2018年3月18日 日曜日
映画『Chicuarotes』撮影中のガエル・ガルシア・ベルナル

映画『Chicuarotes』撮影中のガエル・ガルシア・ベルナル

メキシコの俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルが、『太陽のかけら』(2007)に続き、2作目にあたる長編劇映画監督作品『Chicuarotes』を制作中だ。2018年1月の1ヶ月間に、メキシコシティ南部、ソチミルコのサン・グレゴリオ・アトラプルコ(以下サン・グレゴリオ)地区にて撮影を行った。同地区は、2017年9月19日に起こったメキシコ中部地震で、多大な被害があった場所だ。同作制作会社アマラントの発表によれば、ガエルは、撮影中にこう語っている。「ロケの間、ストレスや悩みもなく、この映画の撮影を心から楽しんでいることに、自分自身も驚いている。それは、心から作りたい映画を作っている幸運に恵まれているからだと思う」。
この映画は、震災の被害があったサン・グレゴリオの復興支援目的もあるが、ガエルは、7年前から同地区を度々訪れ、ロケハンや調査をしていた。「僕もスタッフも、この地区の人々の温かさに惚れ込んでしまった。この地区には面白い出来事がたくさん起こる。メキシコシティの震災被害を象徴する場所でもあるけれど、それを超えたエネルギッシュな部分もある」。
タイトルの『Chicuarotes』とは、サン・グレゴリオの土地に住む人々のことを指す。 切迫した情況下にある二人の青年が、金策を講じて悪戦苦闘するが、そこには犯罪の陰が忍び寄っていた…という物語を、コミカルに描く。「でも、ハッピーエンドで簡単に終わるような映画ではない」と、ガエルは語る。メキシコ社会内の差別を扱いながらも、鋭さに欠ける演出と、物語性で、駄作の烙印を押されてしまった前作『太陽のかけら』だが、今作では、その汚名挽回となるか、期待したい。
さて、そんなガエルに水を差すような出来事が起こった。2月1日に 、ソチミルコの市民団体が、「サン・グレゴリオの再建支援と経済活性を約束すると言って撮影をしたくせに、地元の人たちを散々利用して、何も還元していない」と、ガエルを訴えているのだ。しかし、この市民団体代表の女性は、汚職で悪名高き元ソチミルコ行政区長の妻であり、次期区長の候補者であることから、これから行われる総選挙に向けて、アピールをしているのではと、ささやかれる。そもそも、一俳優を訴えるよりも、支援を滞っているメキシコシティ政府を訴えるのがスジではないか?
この騒動との関連は不明だが、ガエルは、盟友である俳優のディエゴ・ルナや、彼らも運営に関わるドキュメンタリー映画祭アンブランテが行っている、メキシコ大震災支援プロジェクト、「LEVANTAMOS MEXICO」にて、世界中から集まった義援金、およそ2億8500万メキシコペソを、震災の被害にあった地域の家屋の建設に充てると発表。 2月15日から、順次供給を始めていく予定だ。
(メキシコシティ●長屋美保)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年3月号に掲載されています。
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相変わらず元気なペルナンブーコ映画界の話題作から

2018年3月15日 木曜日
原題『A Serpente』 (『メス蛇』邦訳)

原題『A Serpente』
(『メス蛇』邦訳)

ペルナンブーコ映画史におけるエポックメイキング的作品となったのが『匂い立つダンスパーティー』(1997年)であった。このパウロ・カルダス監督作品は、「従来のセルタゥンをポップに読み直した」映画と評価されたが、1930年代、義賊的匪賊カンガセイロの頭目ランピアゥンと行動を共にしたレバノン人写真家ベンジャミン・アブラアンの眼を通してみえたセルタゥン文化が映像化されていた。そのカルダス監督が『セルタゥンは海に変わり、海はセルタゥンに変わるだろう』(2015年)で描いたのは、カンガセイロとナチスが海岸で遭遇するという荒唐無稽なストーリーであったが、同監督の最新作『サウダージ』は、ポルトガル語圏の人たちが心の中に感じるキーワードを巡るドキュメンタリー映画だ。3年の時間をかけて、ブラジル、ポルトガル、ドイツ、アンゴラの4か国で52人の作家、詩人、アーティスト、哲学者らをインタビューし、その累計時間300時間という証言を自在に編集した作品だが、サンパウロでも一般公開され大いに話題となった。
新世代を代表するクレベル・メンドンサ・フィリョ監督の『アクエリアス』(2016年)では不当な不動産業者と闘う未亡人をソニア・ブラーガが好演して国際的な反響をよんだが、今注目を集めている監督は、ジュラ・カペーラだろう。1976年生まれの同監督は、20代でドキュメンタリー映画制作グループCanal03を結成して、短編中編のドキュメンタリー作品を発表してきたが、初めて長編映画に挑戦したのが、ネルソン・ロドリゲス原作の映画化『メス蛇』(2017年)であった。ネルソンが得意とする、愛の三角関係というストーリーはブラジル人が大好きなテーマであり、ベテラン女優ルセリア・サントスの演技もさえていたから、ヒットしたのであった。
そのカペーラ監督が2年前から取り組んでいて現在、最終編集段階に入っているのが、ドキュメンタリー『Mangue Bit』だ。ナサゥン・ズンビのメンバーとは少年時代から一緒に遊んだりしていた仲であることも手伝って、貴重な証言と1990年代の映像を融合させた作品になる由だ。シコ・サイエンスとフレッヂ04による「頭脳付き泥ガニ」マニフェストが発表されたのが1992年、代表曲『泥んこからカオスへ』がリリースされたのが1994年と、文化&社会のモノカルチャーを批判しマンギ(マングローブ)の持つ文化・生物多様性を騒々しく宣言した「マンギ・ビート革命」から四半世紀が経過した。(レシーフェ●岸和田 仁)


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Tokyo Walker 海外交流コンサート “TANDEM” ダンサーATSUSHIとコンゴ出身ラッパーBALOJIの異色共演!

2018年3月13日 火曜日

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ダイナミックな舞で観客を魅了し続けるダンサーATSUSHIと
コンゴ出身ベルギー在住のスタイリッシュなラッパーBALOJIの異色共演!

日時:2018年3月22日(木) 開場18:30/開演19:30
会場:晴れたら空に豆まいて Haretara sorani mame maite
住所:150-0034 東京都渋谷区代官山町20-20 モンシェリー代官山B2
20-20 Daikanyama-cho, Shibuya-ku, Tokyo 150-0034
料金:前売5,000円/当日5,500円(税込)全席自由 ドリンク代別途600円
※整理番号順のご入場となります。
※3歳以上有料・2歳以下入場無料

チケット発売中
Peatix : https://atsushi-baloji.peatix.com/
晴れたら空に豆まいて : http://mameromantic.com/

お問合せ:ポッションエッズ
Tel :03-6459-2212(平日11:00〜18:00)

主催 : TOKYO TANDEM実行委員会
後援 : 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 SYNC MUSIC JAPAN
企画・制作 : ポッションエッズ
制作協力 : 3C
協力 : KADOKAWA / Tokyo Walker

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在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、在日ルクセンブルク大公国大使館、在日ベルギー大使館及びケベック州政府在日事務所と、SYNC MUSIC JAPAN運営事務局後援にて、フランス語圏・日本の音楽を通じた長期的な文化交流を促進することを目的に、双方のアーティストが双方の国で共演するライブ・プロジェクトを2016年10月より開始しました。
この一環として、ダイナミックな舞で観客を魅了し続けるダンサーATSUSHIと、コンゴ出身ベルギー在住のスタイリッシュなラッパーBALOJIの競演コンサートの開催が決定しました。

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ATSUSHI
1996年にダンスを始め、様々なクラブ等でのイベントに出演。
2001年にDragon Ashサポートメンバーとなり、2003年にDragon Ash正式加入。
2006年にソロダンサーとしても国内外の各地で活動開始。
今までの様々なステージで得た経験により、ジャンルや枠にとらわれない踊りと体をいかしたダイナミックな踊りを信条とし、今日のダンサーの在り方を変えることを目指していると共に、日本人ダンサーとしての在り方を常に考えながら活動している。
2009年に生命力の素晴らしさ尊さを伝えていくプロジェクト「POWER of LIFE」を発起し、代表として活動している。
http://www.atsushi-takahashi.com/

BALOJI(バロジ)
詩人、作曲家、リリシスト、脚本家、俳優、パフォーマー、ヴィデオアーティスト、スタイリスト。
1978年コンゴ民主共和国(当時はザイール共和国)生まれ。幼少期に父親とともにベルギーに移住し、16歳で家を出てラッパーとしての活動を本格的に開始する。2008年、アルバム『Hotel Impala』を発表、ゴールド・ディスクとなる。2011年、アルバム『Kinshasa Succursale』はアメリカのNYタイムズ、イギリスのザ・ガーディアン、スペインのエル・パイス、フランスのレ・ザンロックなどの主要メディアで4ツ星の高評価を得る。その後世界200都市でコンサートを行なう。
サンプリングとエレクトロを通じてアフリカ音楽、伝統音楽そしてソウル、ファンク、ジャズといったアフロ・アメリカ音楽が交差し合う音楽性は、バロジが育ったベルギーという地に由来するのだろう。
バロジとは、スワヒリ語で「科学の人」を意味するが、植民地時代に「はオカルト科学と魔術の人」と意味に転じていた。
彼の創作活動の中心にあるのは、なんと言っても柔軟性だろう。あらゆる影響を見事に作品へと昇華させるのだ。
2018年3月、待望のニュー・アルバム『137 AVENUE KANIAMA』をリリース予定。
http://www.baloji.com/

シリア出身のカーヌーン奏者、マヤ・ユセッフがパリ・デビューコンサート

2018年3月12日 月曜日
MAYA YOUSSEF 『SYRIAN DREAMS』(2017)

MAYA YOUSSEF
『SYRIAN DREAMS』(2017)

パリ左岸のセーヌ川に面した場所にひときわ目立つガラス張りの建物がある。アラブ世界文化センターだ。アラブ世界の多種多様な文化の理解を深めようとミッテラン大統領の提唱で建設され、1987年11月にオープンした。かつてフランスはアルジェリア、モロッコ、チュニジア、シリア、レバノンなど 保護領や植民地を通じアラブ世界と大きく関わってきた。最近ではテーマをアフリカのイスラム圏や東方キリスト教など興味深いテーマを取り上げている。
1月27日夜、「シリアン・ドリームズ」と題するマヤ・ユセッフ・カルテットのコンサートがあった。アラブ世界やトルコの伝統音楽には欠かせないカーヌーンという楽器を奏でるマヤ・ユセッフを中心にパーカッション、ウード、チェロで編成されたカルテットだ。カーヌーンは台形の共鳴箱に78本の弦を張ったもので伝統的なアラブ音楽の音階をすべて出すことができる。西洋音楽のピアノに相当する楽器だ。アラブの伝統では楽器は男性が演奏するものでカーヌーンも女性が演奏することは非常に稀だ。
シリア・ダマスカスの進歩的な芸術一家に生まれたマヤ・ユセッフは幼少の頃から音楽に親しみ、音楽家になる夢を描いていた。7歳から音楽院で基礎を学んでいた彼女は9歳になったとき専攻する楽器を決めかねていた。ある日、音楽院に行くために母親と乗ったタクシーの中でラジオから流れるカーヌーンの音色に心を奪われ、マヤは「この楽器をやりたい」と叫んだ。しかしタクシーの運転手は「お嬢さん、これは男だけが演奏できる楽器だよ」と呆れ顔だった。ほどなくして音楽院で「カーヌーン」クラスの登録が始まると即座に申し込み、カーヌーンを学んだ。
こうしてマヤ・ユセッフのカーヌーン人生が始まった。12歳の時にシリア全国音楽コンクールで最優秀賞を獲得。高等音楽院での学士号もカーヌーン専攻だ。2007年、アラブ首長国連邦のドバイでカーヌーンのソロリストとしてデビューしたが、その後より広く国際舞台で活動したいと拠点をロンドンに移した。
「シリアン・ドリームズ」はマヤ・ユセッフのデビューアルバムでもある。仏レーベル、アルモニア・ムンディより昨年リリースしたものだ。シリア紛争が勃発した2011年、ロンドンでその報に接したマヤ・ユセッフは言いようもない気持ちを一気にカーヌーンに託した。そうして生まれたのが「シリアン・ドリームズ」だ。それから6年を経た今も続く戦争。本デビュー盤は故国を想うマヤ・ユセッフの旅でもある。カーヌーンを奏でることは希望であり、癒しでもあるのだ。日本の箏のように爪弾くカーヌーンは「動」と「静」をきめ細かく表現でき、伝統的なカーヌーンを超えた音楽空間へと導いてくれる。(パリ●植野和子)


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YouTubeの統計が示した ブラジル大衆音楽の現在地図

2018年3月9日 金曜日
マリリア・メンドンサ

マリリア・メンドンサ

ブラジルの大衆はいま、どんな音楽をどこで、どのように聴いているのか?このたび、大手紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」は、ブラジル大衆音楽の2014年からの3年間の動向について調査した結果をウェブ上で発表した。
YouTubeは、ブラジルでも最もアクセスの多い動画共有サービスだ。これを、音楽を聴くためのツールとする利用者人口が、メキシコに次いで、世界で2番目に多いのがブラジルなのだそうだ。(日本は13位。)この環境を利用して、フォーリャ紙はYouTubeで配信されている人気アーティスト340組の楽曲が、どの地域でどれだけアクセスされているのかを同アプリのツールを使って、全1340億アクセスからあぶり出した。その結果から二つほど話題を紹介したい。
◆地図を塗り替えるマリリア・メンドンサ
ブラジルで最も人気のジャンルはブラジル風カントリーのセルタネージョだ。農牧地の広がる南部、中西部でファンが多く、これまで男性ヴォーカルのデュオが固定化したジャンルの様式であった。そんななか2013年にYouTubeデビューした女性歌手マリリア・メンドンサは、4年間でジャンルの粋を超えて、目下アクセス数最多の新星となった。メンドンサは、セルタネージョ人気が高くない北部・北東部での活動で、主に女性のファンを味方に付け、それから全国ツアーを行う前例のない展開で人気を得た。
◆圧倒的人気の3ジャンルと〝王様〟の健在
ブラジルで最も人気の高い音楽といえば、サンバ、ボサノヴァでなく、セルタネージョ、ファンキ、ゴスペルの3ジャンルだ。調査対象の3年間のトップアクセス20には、上述のマリリア・メンドンサを筆頭にセルタネージョ歌手7組、ゴスペル歌手6人、ファンキMC2人が入っている。
ブラジルにはキリスト教福音派信者が多いので、自ずとゴスペルが高い支持を得る。それに加えて米国とは異なり、神様を讃えさえすればゴスペルに分類されるので、音楽趣味の異なる様々なリスナーを引きつけるようだ。
ファンキの人気は、インターネット普及がインディーズレーベルの可能性拡大と中産階級の若者のライフスタイルの変化をもたらしたことの影響が大きいと伝えている。またファンキは、もはやリオよりサンパウロのほうが勢力マップを広げ、南部、北東部でも支持を得ている。もはや無視できないジャンルから、メインストリームの一つとなったと言えよう。 なお、このトップ20に、ロベルト・カルロスが16位でランクインしており、〝王様〟の人気が未だ健在であることを示した。またリオ五輪開幕式にも出場したセクシー歌手アニータは11位を占めた。(サンパウロ●仁尾帯刀)


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