ファドの祭典カイシャ・アルファマ

アルファマ地区にあるファド博物館

アルファマ地区にあるファド博物館

ポルトガル観光のハイシーズンは、通常7〜8月。夏の休暇を楽しむ外国人観光客を街中で見かける時期だが、今年の夏のリスボンは例年以上に観光客で溢れ返っていた。実際、政情不安定な国、テロや自然災害の危険性が懸念される国や地域が悲しいかな増加傾向にある昨今、治安も良く気候も穏やかで、物価の安いポルトガルの観光地としての需要は高まっているようだ。実際、国際的な研究機関が今年発表したランキングによると、ポルトガルは「世界で五番目に安全な国」で、「ヨーロッパで最も国民がフレンドリーな国」だそうだ。

大航海時代の遺産をはじめ、美しい街並みや海岸、美味しい食べ物など観光客に魅力的な見所が盛りだくさんの首都リスボンだが、音楽ファンなら見逃せないのがアルファマ地区にあるファド博物館だ(http://www.museudofado.pt/)。98年に開館したこの施設には、ファドの歴史やポルトガルギターの説明パネルの他、数々のポルトガルギターやレコードのコレクション、アマリア・ロドリゲスが着用した衣装や2014年にカルロス・ド・カルモが受賞したグラミー賞のトロフィー、ジョゼ・マリョア作の絵画『ファド』など、ファドファン垂涎のコレクションが並ぶ。また、新旧のファドが視聴できる視聴覚室、CDからギターまでファド関連商品を揃えたショップ、コンサート用ホール、併設のレストランなど、博物館としては中規模ながら、音楽好きなら一日中楽しめる場所だろう。(ちなみに、コンサートは勿論、ポルトガルギターやファドのレッスンも定期開催されている)

そんなファドの頭脳ともいえるこの場所を中心に、9月の23(土)・24(日)の二日間ファドの祭典カイシャ・アルファマが開催される。第4回目の今年は、ラケル・タヴァレス、ジゼラ・ジョアン、カルミーニョなど国際的に活躍するファディスタから、少年ファディスタとして注目を集めたキコ、音楽コンテストで優勝を重ねる16歳のマウラ・アイレス、昨年末に逝去した大御所ベアトリス・ダ・コンセイサンへのトリビュート企画など、期待の新人から大ベテランまで各日30人以上のファディスタとミュージシャンが登場。会場もファド博物館のホールとレストランを中心に、アルファマ地区の展望台や教会、地域住民の集会所など全11か所で、普段ファドを聴けないような場所でも生の歌声と演奏を楽しむことができる。ヘッドライナーの一人、ラケル・タヴァレスは地元ディアリオ・デ・ノティシア紙の取材に興奮気味にこう答えている。「10年前には、『フェスティバル』『ファド』という単語が同じ文の中に収まるなんて考えてもみなかった。でも今は、カイシャ・アルファマがある。」

(ポルトガル●山口詩織)


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