MBLがカエターノ・ヴェローゾを児童性虐待者だと中傷。カエターノがMBL相手に訴訟を起こす

カエターノが児童性虐待者だとMBLがフェイスブックで中傷したメッセージの一つ。

カエターノが児童性虐待者だとMBLがフェイスブックで中傷したメッセージの一つ。

カエターノ・ヴェローゾと妻のパウラ・ラヴィジニが、MBL(Movimento Brasil Livre=ブラジル自由運動)に対し名誉毀損の訴えを起こした。
かつてパウラは、1998年のプレイボーイ誌のインタビューで、彼女が13歳の時に当時40歳のカエターノと初体験をしたと告白した。これをMBLはカエターノが児童性虐待者だとフェイスブック上において24項目のメッセージで中傷した。 MBLは当時のジルマ政権を弾劾裁判にかけるため、ブラジル中で抗議運動を牽引した保守的思想の団体として2014年に結成された。
9月にポルトアレグレ市内の美術館で開催された〝Queermuseu〟という展覧会。テーマは最近よく話題になる社会問題のジェンダーフリー。85名の著名アーティストたちによる全270作品の大展覧会だった。しかし、MBLが「作品には児童性虐待、動物虐待をあおる作品が展示されている」とし、フェイスブックを通じて全国に反対運動を展開。大きな問題として反響をよび、美術館はこの展示を終了期間前に中止せざるをえなくなってしまった。
また、10月にサンパウロの近代美術館で開催された〝Panorama da Arte Brasileira〟のオープニングイベントでも問題が発生。有名芸術家リジア・クラークの彫刻作品からインスピレーションを受け、ワグネル・シュワルツが全裸パフォーマンスを行った。その一部の映像がSNSで拡散された。仰向けで全裸になった彼に母と5歳の娘が、彫刻物となった彼の足を触って動かすというシーンだった。これにMBLを始め、怒りのコメントがネット上に広がった。近代美術館前に児童性虐待だと反対運動する人たちが警備員やキュレーターたちを取り囲み、小競り合いになる場面がテレビに流れた。一方、美術館は「年齢制限をかかげており、子供は保護者と同伴だった。作品を好き嫌いと意見するのは自由だ。しかし、身体の一部を触るのを児童性虐待と結びつけ、それを禁止するのは意味のない検閲にあたる」と述べた。
カエターノを始めとするアーティストたちは団結し、ネットを通じて抗議運動を起こした。それがMBLの目に触れ、対立を深めた原因である。
それに、アートのあり方についてのテーマのはずが、政治的な左派右派対立の問題にもすり替えられて論議されており、問題を複雑化している。ささいなことがネットを通じてなんでも拡散し、自由にものを言える反面、いろんな対立が表面化しているのは、世界共通の現象のようである。
(サンパウロ●北村欧介)


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