人気クンビア・グループ、ロス・アンへレス・アスレスの背後に政治の影

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メキシコでは、2017年元旦早々から、ガソリンが高騰し、物価が軒並み上がり、各地での反対運動に便乗して、暴動や略奪が起こるほどの騒ぎとなっている。そんな不穏な年明けを迎えたメキシコだが、メキシコシティ恒例の独立記念塔での年越しコンサートで、人気クンビア・バンド、ロス・アンヘレス・アスレスが演奏し、メキシコシティ政府の発表では、約8万の人々が楽しんだという。コンサートの入場は無料だが、政府関係のイベント実現には、莫大な資金が動いている。もちろん、それらが、国民の税金から捻出されているのは言うまでもない。

2016年度第3期のユカタン州の経費使途報告書によれば、メキシコ観光局とともに行った、同州の宣伝プロジェクトのひとつが、ロス・アンへレス・アスレスの2016年9月に発売された、最新アルバム『De plaza en plaza』のアルバム録音とビデオ制作であり、700万ペソ(4000万円近く)が州の経費から使用された。

同アルバムは、CDとDVDがセットになっており、ナタリア・ラフォルカデとロドリゴ・イ・ガブリエラ、アレックス・シンテック、グロリア・トレビ、フィト・パエスを含む、13アーティストが、ロス・アンへレス・アスレスと共演。交響楽団をバックにして、往年のヒット曲をセルフ・カヴァーするというコンセプトのもとに制作された。2016年3月には、ユカタン州の観光名所をロケ地に、プロモーション映像を撮影し、そのドキュメントが、DVDに収録されている。ユカタン州の美しい自然や、コロニアルな町並みを舞台に、大スターたちが、オーケストラをバックにして、クンビアを歌うのは、豪華で楽しいが、そのために大々的に税金が使われているのには、疑問が残る。

さらに、2016年6月には、グアナファト州セラヤで行われた、国民行動党(PAN)員でセラヤ市長候補だったラモン・レムスの選挙キャンペーンのために、ロス・アンへレス・アスレスが演奏したのだが、その公演代金の請求書には、実際に、グループへ支払われた報酬の3倍にあたる、23万ペソという高額が記載され、選挙資金の着服疑惑が、全国選挙機関の調査により明るみになったこともある。

ロス・アンへレス・アスレスは、素晴らしいグループだが、背後には、政治の黒い部分が見え隠れしているのが、気になるところだ。

(メキシコ●長屋美保)


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