「ベッラ・チャオ」50周年記念盤がパリのブダ・ミュージックよりリリース

伝統を守りつつ、現代風へのアレンジもした珠玉の18曲が収録された「ベッラ・チャオ」50周年記念盤のアルバム

伝統を守りつつ、現代風へのアレンジもした珠玉の18曲が収録された「ベッラ・チャオ」50周年記念盤のアルバム

1964年、イタリア中央部の小都市スポレートで開かれた《二つの世界》と題するフェスティバルは後にイタリアのフォーク・リバイバルが展開する契機となった歴史的なイベントであった。当時の流行歌とは無縁の歌い手たちが労働や社会・政治的諸権利の要求をテーマにした歌を披露したのだった。民俗音楽学者ロベルト・レイディが採譜し、同フェスでジオヴァンナ・ダッフィニが歌った「ベッラ・チャオ」。これは19世紀末から20世紀初頭にかけてポー川流域に広がる水田で田植え作業をするモンディーナと呼ばれる季節労働の女性たちがテーマで、映画『にがい米』(1949年)にも描かれている。そして戦後有名になった力強い対独パルチザンの歌のバージョンがある。これら二つが一体をなすように「ベッラ・チャオ」50周年記念盤に収録されている。アコーディオン奏者リッカルド・テージを中心に集まったイタリア伝統歌の担い手である歌手とミュージシャンたちがこの「ベッラ・チャオ」の真髄を守りながら全18曲を現代風に味付けして再現したアルバムだ。

リッカルド・テージは1978年、22歳の時にこの「ベッラ・チャオ」のフェスで歌ったカテリーナ・ブエノのバンドでデビューした。女性歌手ルッチラ・ガレアッツイも、「ベッラ・チャオ」に参加した歌手・民俗音楽研究家であるジオヴァンナ・マリーニが1976年に結成した「クアルテット・ヴォカーレ」(政治風刺をアカペラで歌い上げる女性4人のグループ)のメンバーとして1977年から15年間歌っていた実力派だ。彼女のパワフルな中にも悲哀を帯びたヴォーカルは「オ・ゴリーシア」に生かされている。この反戦歌は一部を、会場で配布された歌詞にはなかった「裏切り者、軍人よ」に入れ替えて歌われたためスポレートのフェスで大スキャンダルを巻き起こした。本盤ではそのままの形で歌っている。また荘厳な「ノ・ミ・ジャメダース・マリア」を歌い上げるエレーナ・レッダは1979年にレコードデビューしたサルデーニャの歌姫だ。リッカルド・テージ、ルッチラ・ガレアッツイらと共にイタリアのトラッド歌手やミュージシャンを一堂に集めた1997年の『トランジターリア』に参加している。そして唯一の男性ヴォーカル、アレッシオ・レーガは1972年生まれ、アナーキストのシンガーソング・ライターである。もう一人の女性歌手ジネーヴラ・ディ・マルコも「ベッラ・チャオ」の後に生まれた世代だ。

ワールドミュージックの見本市WOMEXが今年スペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラで開かれるが、その会期中の10月21日、ブダ・ミュージックのショーケースとして「ベッラ・チャオ」のお披露目コンサートが予定されている。その後ベルギーを皮切りにツアーが始まる。

(パリ●植野和子)


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