新作ブラジル盤紹介■月刊ラティーナ10月号より■その2

月刊ラティーナ10月号で紹介したブラジルからの輸入盤を紹介していきます。女性ヴォーカル特集その2は、マヌエラ・ホドリゲス、ジュリアナ・アマラル、アナ・パウラ・ダ・シルヴァです。

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バイーアだけにとどまらない魅力!

IND MR2016

⚫︎MANUELA RODRIGUES / SE A CANÇÃO MUDASSE TUDO
⚫︎マヌエラ・ホドリゲス / セ・ア・カンサォン・ムダッシ・トゥード
CD:2,268円(税込)

◆ニューオーリンズで音楽を学んだ経験もあるバイーアのシンガー/ソングライター、マヌエラ・ホドリゲスのサードアルバム。グスタヴォ・ヂ・ダルヴァ、タデウ・マスカレーニャス、アンドレ・T、ジョアン・ミレー・メイレリスといったバイーアの才人たちがプロデュースを分担し、エレクトロニカ、アフロ・バイーアのパーカッション・サウンド、ファンク・ロックなど、曲ごとにヒネリを利かせてシーンがめまぐるしく転回するが、大地から空に響く遠心力を備えたマヌエラの歌声が統一感をもたらし、「歌が全てを変えるなら」というタイトルにも納得できる。打ち込み+声の多重録音でカヴァーしたサンパウロのホムロ・フローエスの作品、シルヴィア・マシェッチやニコラ・クラシッキをゲストに迎えた曲、カズアリーナのジョアン・カヴァルカンチとの共作・共演もあり、バイーアだけにとどまらない軽快なフットワークも魅力。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:中原 仁】

▪️Manuela Rodrigues / Bagagem

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じっくりと聴き込みたい力作

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⚫︎JULIANA AMARAL / AÇOITE
⚫︎ジュリアナ・アマラル / アソイチ
CD:2,268円(税込)

◆このアルバムに、軍事政権の抑圧厳しい時代に産み落とされたミルトン・ナシメントのヘヴィな名盤「ミラグリ・ドス・ペイシーズ」を彷彿とさせる、あの言い知れぬ空気が内包されていると感じるのは評者だけだろうか? 知的な都会派サンバが持ち味「であった」サンパウロの女性シンガー、ジュリアナ・アマラウ四年ぶりの新作を聴き、その収録曲が放つメッセージ性の強烈さに驚いた。「鞭」あるいは「厄」という意味を持つアルバムタイトル、「この暴力の時代において、無関心は怠慢であると思います」と書かれたクレジット序文を通じ、これは懊悩する彼女の心の底から搾り出されたプロテストソング集なのだと理解する。ヴィオラ・カイピーラの音色が世捨て人的な儚さをもって鳴り響き、ヴォーカルと演奏はアルバム終盤に近づくごとにドラマチックな激しさを増していく。歌詞を訳しながらじっくりと聴き込みたい力作である。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:上沖央明】

▪️JULIANA AMARAL / AÇOITE AO VIVO

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飛び抜けた歌の力!キャリア20周年の記念作品

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⚫︎ANA PAULA DA SILVA / RAIZ FORTE
⚫︎アナ・パウラ・ダ・シルヴァ / ハイス・フォルチ
CD:2,160円(税込)

◆サンタ・カタリーナ州出身の女性シンガー・ソングライター、アナ・パウラ・ダ・シウヴァの最新作は、自身のキャリア20周年を記念する作品。彼女自身の歌とギターに、ダヴィ・サルトリのピアノ、ウィリアン・ゴイのドラム/パーカッションというシンプルな編成だが、簡潔で切れのあるサウンドが実に小気味良い。が、なんと言っても彼女の歌の力が飛び抜けている。華やかで力強く、しかも包み込むような柔らかさと、心地よい余韻を兼ね備えている。本作ではルーツサンバを中心に、ブラジルの伝統的な音楽のみならず、サンタ・カタリーナと国境を接する、アルゼンチンのカンドンベなどをも素材とし取り上げている。自身の音楽的ルーツを掘り下げ、このトリオの研ぎ澄まされた音楽として再構築した意欲的な作品だ。余談ではありますが、彼女の慈愛に溢れたその顔は、まるでヘレニズム系の仏像の様ではありませんか。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:石郷岡 学】

▪️Ana Paula da Silva / Raiz Forte

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