ポレミックな映画『アクエリアス』、商業的にも大成功

映画『アクエリアス』のポスター

映画『アクエリアス』のポスター

ペルナンブーコ映画新世代を象徴するクレベル・メンドンサ・フィリョ監督の話題作『アクエリアス』が、9月1日から全国一般公開されている。ブラジル全国で89の映画館で上映されているが、初日から4日間で、6万人近い観客動員数を記録したというから、ブラジル国産映画としては今年最高のヒット作だ。

この映画が何故ポレミックな話題作なのか。まず、5月に行われたカンヌ映画祭でパルム・ドォールにインディケートされたことよりも、監督や主演女優ソニア・ブラーガらがルセーフ大統領弾劾審議への反対行動を展開し、「ブラジルのクーデター反対」「我々はプロテストする」「ブラジルは民主主義ではない」と書かれたプラカードを掲示したことで、世界のメディアが大きく取り上げたことだろう。さらには、愛のシーンが過激すぎるからと当局が「18歳未満禁止」と決めたため、またひと悶着し、結局、公開直前に「16歳未満禁止」に緩められた。というように前評判が先行したのであった。

この長編映画の舞台は、ペルナンブーコの州都レシーフェを代表するボア・ヴィアージェン海岸だ。海岸通りに隣接するアパート・マンション群のなかでも、古く、1940年代に建設されたのが「アクエリアス」(みずがめ座)だ。ソニア・ブラーガ演じるクラーラは、65歳でジャーナリストを定年退職した未亡人。三人の子供たちを育てたのもここで、思い出も詰まったアパートに住み続けたいのだが、このマンションを建て替えようとする不動産業者から転居を要求される。他の住民は皆同意したとの圧力・攻勢に、クラーラは断固抵抗する。クラーラに対するいやがらせが、強まって、という社会問題を切り取った映画作品だ。

主要紙(フォリャ・デ・サンパウロやエスタド・デ・サンパウロ)の映画評では、五つ星に近い評価を得ており、映画としての質については異論は少ない。問題は、クレベル監督やソニア・ブラーガが現テメル政権批判の発言や行動を続けていることだ。監督に賛成する観客は、映画館でも「テメル出ていけ」シュプレヒコールを連呼したりしているが、PT(労働者党)政権の汚職・腐敗に批判的な人たちからは、「こんなクズ映画はボイコットすべし」という運動も起きている。

クレベル監督自身、ジョアキン・ナブーコ財団のキャリア職員(準公務員)であり、この財団は連邦政府文化省管轄なので、税金ドロボウである、というのが監督批判者の論理だからだ。

(レシーフェ●岸和田仁)


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