警察によるデモ隊への発砲が発端 教職員協議会と政府の対立激化

メキシコシティ内務省近隣でのCNTE占拠の様子

メキシコシティ内務省近隣でのCNTE占拠の様子

メキシコでは、国の教育改革に反対する教職員全国協議会(CNTE)と政府の対立が各地で激化している。南部オアハカ州、チアパス州、タバスコ州、中部プエブラ州などの高速道路をCNTEが占拠し、交通機関や物流にも影響を与えている。筆者が住むメキシコシティでも、内務省近隣の公園をCNTEが占拠し、巨大なテント村となってしまった。町には機動隊が溢れ、毎日のようにデモ隊と警察機動隊がやりあっている。

激化の発端は、2016年6月19日オアハカ州アスンシオン・ノチストラン市の国道を占拠しようとしたCNTEと警察が衝突し、付近住民を含む8人が死亡、150人が負傷した事件だ。銃を持たないデモ隊に、警察が発砲して、惨事を招いたこともあり、俳優のガエル・ガルシア・ベルナルやダミアン・ビチルらがインターネット上で政府への抗議を表明した。ビチルは、事件翌日の6月20日に、ツイッター上で、「メキシコ政府に告ぐ。オアハカの殺戮をやめよ。世界中が見ているんだぞ」と書いた紙を掲げた自身の姿の写真をアップしている。オアハカの事件を受けて、医療物資を現地へ送るために集める活動が各地で行われたり、CNTEに賛同を示す人々による、「OAXACA RESISTE(オアハカは闘う)」という言葉がネット上にも溢れるようになった。

国際問題に発展したいま、チリのヒップホップ・アーティスト、アナ・ティジュもFacebookのライヴ映像でオアハカへの支援を送っていた。

その一方で、メキシコ政府主導のネガキャンペーンは止まらない。CNTEによる暴力行為や、商店や商業施設での略奪が行われていると報道されるが、実際には政府が雇った者たちが暴れているし、騒ぎに便乗した警察官が、デパートでの略奪を行っているビデオまで流出しているくらいだ。メキシコの有名なロック歌手、アレックス・ロラは、雑誌ローリング・ストーンの取材で、「CNTEが抗議する理由もわかるが、他人に迷惑をかけているのは許せない。今は、みんなCNTEを憎んでいる」という発言をしているが、政府に買収されたメディアは国民の不満を煽るようなニュースを日々垂れ流し続る。日本のCNTEについての報道も偏っているのを知り筆者も苦々しい思いをしているが、教育者たちが、満足に働けない状況では、素晴らしい教育を子どもたちに受けさせることなどできない。メキシコに平和が訪れる日はあるのか?

(メキシコ●長屋美保)

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ8月号に掲載されています。
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