ペルー大統領選挙とカルチャー・ポイント政策

カルチャー・ポイント登録済みの『ジャンパジェック(LLAMPALLEC)』は、チクラヨ市(リマから北へ770km)にある文化協会で、北海岸地域の郷土舞踊や音楽の継承・普及活動を行なっている。 © Oscar Chambi

カルチャー・ポイント登録済みの『ジャンパジェック(LLAMPALLEC)』は、チクラヨ市(リマから北へ770km)にある文化協会で、北海岸地域の郷土舞踊や音楽の継承・普及活動を行なっている。
© Oscar Chambi

近年、中南米各国で『カルチャー・ポイント政策』なるものが拡大している。簡単に説明すると、これは全国のコミュニティーに根付いた文化組織(拠点)を国が再認識し、データベースに登録した上で、運営面での訓練や資金援助を行いながらその活動を支えていこうというプロジェクトである。

この政策の起源はブラジルで、第一次ルーラ政権下、ジルベルト・ジルが文化大臣だった当時に始められた。その後、アルゼンチン、コスタリカ、コロンビア、チリ、パラグアイ、ウルグアイでも推進され、ペルーでは、2011年2月から導入された。この政策の先駆けであるブラジルでは、すでに3500を超える登録があると言うが、ペルーでは、まだ229カ所(6月時点)に留まり、それらの大半がリマ首都圏に集中しているため、地方における活性化が求められている。また、現在、同政策の法案化も進められていることから、7月に発足する新政権の働きにも注目したいところだ。

なお、6月5日に行なわれたペルー大統領選挙の決選投票では、フジモリ元大統領の長女のケイコ・フジモリ氏とペドロ・クチンスキー元首相が大接戦を繰り広げ、日本のマスコミも詳しく報道したことから、興味を抱いた読者も少なくないと思う。ここでは、両者の文化面での政策に関して取り上げてみたい。

候補者の政策案は、全国選挙審議会(JNE)に提出され、ウェブサイト上に公開されているのだが、ケイコ氏のそれには文化に関する記載がほとんどないのが特徴的だった。さらに、選挙戦中のインタビューで文化政策に関して尋ねられた際にも、的外れな回答をしていたことから、彼女は文化を重要視していないという見解が一般的だった。いずれにしても、ミュージシャンや俳優、ダンサー、画家、イラストレーターなどの多くのアーティストたちが、SNSなどを通して「反ケイコ」を表明していたことも記しておく。

一方で、大統領に当選したクチンスキー氏の案では、文化政策の現状分析が行われた上で計画を提案、さらに実施時期まで詳細に記述されている。また、先に取り上げた、カルチャー・ポイント政策に関しても、来年度における予算の増額や登録拠点の拡大(政権終了となる5年後に1000カ所)を目標に掲げていることから、新政権下における文化政策の振興を期待したい。

(ペルー●川又千加子)

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ7月号に掲載されています。

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