月刊ラティーナ5月号で紹介したブラジルからの輸入盤を紹介します。
フンド・ヂ・キンタルの結成40集年記念ライヴ作(マリオ・セルジオの遺作になってしまいました…)に、ポップで可愛いクラリシ・ファルカォン新作、セルソ・フォンセカ新作に、ムンド・リブリSAの気合の入ったライヴ盤に、アシェーバイーア2016!
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女優、歌手、作曲家、脚本家など26歳という若さながら多彩な才能で活躍
●CLARICE FALCÃO / PROBLEMA MEU●
●クラリシ・ファルカォン / プロブレマ・メウ●
CD:2160円(税込)
女優として活動のキャリアをスタートし、歌手、作曲家、脚本家など26歳という若さながら多彩な才能で活躍しているクラリシ・ファルカォン。2012年に歌手デビュー作を発表し、翌年ラテングラミーの新人賞部門にノミネートされた。セカンドアルバムとなる本作はプロデューサーにカシンを迎え、前作でのアコースティック路線から一転して華やかな作品となった。生き生きとしたクラリシの歌声を、カシンの他、リオの新世代ヂオゴ・シュトラウスとダニロ・アンドラーヂ、バンダ・ド・マールのフレッド・フェヘイラらがバックでサポート。ポップ、ロック、フォーク、ブレーガ、ディスコといった様々な曲調が収録されているが、これからの時代性を感じる作品に仕上げたカシンの力量を随所に感じることができる好作だ。アルベルト・コンチネンチーノとハイラマズのショーン・オヘイガンがアレンジで参加していることも注目だ。【月刊ラティーナ2016年5月号 掲載 text:堀内隆志】
▪️Irônico – Clarice Falcão▪️
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春を通り越して一気に夏までトリップさせてくれる1枚
●VA / AXÉ BAHIA 2016●
●VA/ アシェー・バイーア 2016●
CD:1,836円(税込)
すでに春だけれど、寒さに耐え切れなくなり温暖な国に逃亡したくなる頃に毎年リリースされるコンピレーションアルバム「Axe Bahia」。2016年版もイヴェッチ・サンガーロ、アルモニア・ド・サンバ、チンバラーダ、エ・オ・チャンなど、テッパンミュージシャンはもちろんのこと、今年のサルヴァドールのカルナヴァルで最も注目されたであろう新人バンド、ヴィンガドーラの曲も収録されている。(カルナヴァルでは「Metralhadora」が大ヒットしたが、バンドが脚光を浴びるきっかけとなったのは⑭)。ここ最近ロン毛を結んですっかりアカ抜けた風貌のウェズリー・サファダォンとチカバーナの④や、意外なところでネチーニョ⑮のゆるさが○。踊るにもまったり聴くにももってこいの、春を通り越して一気に夏までトリップさせてくれる1枚。【月刊ラティーナ2016年5月号 掲載 text:成田久美子】
▪️Ivete Sangalo – O Farol // Ao Vivo▪️
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セルソ・フォンセカのボサノヴァ路線。至極洗練されています。
●CELSO FONSECA / LIKE NICE●
●セルソ・フォンセカ / ライク・ナイス●
CD:2,268円(税込)
歌手、コンポーザー、ギタリストそしてプロデューサー。ボサノヴァを歌う人としていま最も国際的に知られたブラジルを代表するアーティストの一人であり、スティービー・ワンダー、カルロス・サンタナなどとステージを分けた。30年以上のキャリアを積むカリオカは、すでに15枚のCDをリリース。4年ぶりの今作は、ボサノヴァへの回帰作で、2015年ブラジルディスク大賞で、一般投票10位、関係者投票4位にランクインした人気作だ。①、③、⑤、⑦、⑫は英語曲。本人が自らの音楽的アイデンティティについて、”エレガント”であると語っているが(弊誌2月号でインタビュー掲載)まさに優雅でエレガントという表現がまさしくぴったりで、なんともリラックスのできちゃう、安心感のある声。③と⑥にはピアノでマルコス・ヴァーリがローズ・ピアノで参加。イントロのストリングから、ぐーっと心を奪われていく。【月刊ラティーナ2016年5月号 掲載 text:Lissa】
▪️Celso Fonseca’s New Album▪️
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誰もが寄りかかりたくなる大樹、それがフンド・ヂ・キンタル
● FUNDO DE QUINTAL / 40 ANOS NO CIRCO VOADOR●
●フンド・ヂ・キンタル / 40アーノス・ノ・シルコ・ヴォアドール●
CD+DVD :2,808円(税込)
CD:2,160円(税込)
2000年の『シンプリシダーヂ』から数え、7枚目となるフンドのライヴ盤。毎回異なるコンセプトのライヴ盤を届けてくれるが、今回のテーマはバンド結成40周年。「サンバ・エレガンチ」と称される国宝級バンドの40年を振り返るとなれば、卒業生を集合させたくなるものだが、そこはクレベール・アウグストのみ(貴重…!)の招集で、選曲での偏りを避けることで40年間を表現。「バイーアのサンバス・ヂ・ホーダ」に元ヘヴェラサゥンのシャンヂ、そして「カシキアンド」にモノブロコを招集することが、ある意味フンドとカシーキの魂が次世代に精神的に引き継がれたかのように思える。マリオ・セルジオはグループに戻ったが、以前のように定期的に新譜を発表する状況には戻ることはないだろう。音楽的に新しいモノはそこにはなくても、誰もが寄りかかりたくなる大樹、それがフンド・ヂ・キンタル…そんな印象の1枚だ。【月刊ラティーナ2016年5月号 掲載 text:船津亮平】
▪️Fundo de Quintal – Só Felicidade (40 Anos – No Circo Voador)▪️
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マンギビートも生き方だ!
● MUNDO LIVRE SA / MANGUE BIT AO VIVO●
●ムンド・リヴリ SA / マンギ・ビット・アオ・ヴィーヴォ●
DVD +CD:2,808円(税込)
ウィリー・コローンやジルベルト・ジルの言葉を借りるまでもなく、サルサやトロピカリズモと同じくマンギビートも「生き方」なのだ。シコ・サイエンスと並ぶマンギのアイコン、フレッヂ04とムンド・リヴリのキャリア初ライヴ盤が2015年収録の本作。1994年、欧米のメインストリームが「ブラジル(≒レシーフェ)がヤバい」とザワつき出したのはCSNZ『カオスのマンギビート』に加えて、『サンバ・エスケーマ・ノイズ』の存在も不可欠だった。もっと言えばこの2枚がそれ以降のリオ/サンパウロの新・新世代の音楽的発展を100倍ブーストさせたのだと思う。キャップと半ズボンの出で立ちでギターやカヴァコをかき鳴らし、北東部の多様なリズムとダウナーな曲調にのせて、繊細かつ豪快に毒を吐き社会問題を提起する…といったフレッヂ04のイメージは外見上の変化はあっても、生き方は30年以上変わらない。きっとこれからも。【月刊ラティーナ2016年5月号 掲載 text:船津亮平】
▪️Mundo Livre SA – 04 – Meu Esquema – 2016▪️