オス・チンコアンス、サルヴァドールでCD発売と伝記出版記念ライヴ

カストロ・アルベス劇場で開催された記念ライヴのポスター

カストロ・アルベス劇場で開催された記念ライヴのポスター

バイーアの73歳の異色シンガー、マテウス・アレルヤが今年の始め2枚目のソロアルバム『Fogueira Doce』を発表。そして12月に自ら活動していた伝説のアフロコーラスグループ、オス・チンコアンスが出したLP3枚のCD発売化と同グループの伝記出版記念ライヴをカストロ・アルベス劇場で行った。ゲストにマルガレッチ・メネーゼスとサウルも参加。
日本語だと怪しそうな意味のオス・チンコアンス。彼らをすでにご存知のラティーナ読者なら、バイーアオタクと認定されるだろう。グループ名はチンコアという鳥の名前が由来らしい。
バイーアの海岸をバックに白いズボンを履いた上半身裸の3人の男性のLPジャケットが有名である。産業が発達していた18世紀頃に栄えた町カショエイラ(サルヴァドールから116キロの距離)。奴隷制が廃止されるまで、4万人以上の奴隷たちが、その地域のサトウキビ農場で働かされていたらしい。黒人比率が多く、アフロ文化や宗教も根強く残っている。
50年代後半、この町で結成されたグループは、コーラスグループ、トリオ・イラキタンの影響を受け、ボレロのスタイルでアルバム『Meu Último Bolero』を発表(60年)。しかし、全く売れず、マテウスがこのグループメンバーに加入。アフロ宗教のカンドンブレやサンバジホーダなどのリズムをとりいれた。そしてサンバのネルソン・カヴァキーニョが70年、カルトーラが74年に最初のアルバムを発表した頃、73年に発表したチンコアンスの2枚目のアルバムは、3名のボーカルのボレロ調のハーモニー声と共に、アフロの要素のリズムとギターを交えたスタイルに発展。アフロ宗教音楽とブラジルポピューラー音楽をミックスした画期的なアルバムとして評価された。収録曲には、近年カルリーニョス・ブラウン、チンバラーダ、マメット、ベシーガ70らにカバーされて再ヒットされた曲も数曲入っている。77年に発表したアルバムにある曲「Cordeiro do Nanã」は、ナナンというカンドンブレの神様に捧げた曲で、ジョアン・ジルベルトやカエターノもカバーしたことで多くの人に知られることになった。
1983年にグループ3名はアンゴラ文化省のプロジェクトでルアンダに渡る。そのままマテウスたちは現地に住み続けたが、メンバーの一人バドゥはソロ活動のため、リオへ戻りグループを脱退。残りのメンバーであるダジーニョの死により、マテウスは2000年にバイーアへ戻ってきた。
今回のCD化記念ライヴには、現在スペインのカナリア諸島に住んでホテルなどで歌うバドゥを招待。マテウスとサルヴァドールで34年ぶりに再会し、共にカストロ・アルベス劇場で共演にいたったわけである。
(バイーア●北村欧介)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年1月号に掲載されています。
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