ディズニー・ピクサー・アニメ新作『死者の日』現地で大反響

モレリア国際映画祭プレミア上映での、ガエル・ガルシア・ベルナル ©Festival Internacional del Cine en Morelia

モレリア国際映画祭プレミア上映での、ガエル・ガルシア・ベルナル
©Festival Internacional del Cine en Morelia

11月1日から2日にかけて、年に一度、祖先たちがこの世に戻ってくるとされる、メキシコのお盆「死者の日」。そんな、色彩豊かな儀式をテーマにした、ディズニー・ピクサー・アニメ新作『リメンバー・ミー(原題:『COCO』)』が、メキシコで10月27日より劇場公開中だ。現地では、各劇場に長蛇の列が出るほど大ヒットしている。
メキシコ郊外の街で、靴職人一家に生まれ育った、音楽好きの12歳の少年、ミゲル。曾曾祖母一家を捨てた音楽家の曾曾祖父を恨んで、家族全員が音楽を憎んでいるが、将来は地元の大スター、エルネスト・デ・ラ・クルスのような音楽家になりたいと切望し、屋根裏部屋に隠れて、自作のギターを練習している。だが、家族にギターを壊されて、ヤケになり、死者の日のギター・コンテスト出演のため、憧れのエルネストの墓にあるギターを盗もうとしたことから、冥界に取り残されてしまう。さてミゲルはこの世に戻れるのか…… という物語。グアナファト州のコロニアルな街並み、ミチョアカン州の先住民色が強い死者の日の風景、オアハカ州の木彫り民芸のアレブリヘス、メキシコ州のテオティワカン遺跡など、メキシコ各地の風景から着想を得た架空の街、サンタ・セシリアを舞台に描かれ、メキシコの愛しいエッセンスや家族への想いが凝縮され、ディズニー嫌いの筆者も、涙なしでは見られなかった。
本作には、スペイン(西)語版(メキシコおよび、ラテンアメリカで公開)と英語版(日本を含むその他の国で公開)が存在し、声優もそれぞれ異なる。ミゲルの曾祖母ココを、西語版では、メキシコ左派作家のエレナ・ポニアトウスカが演じ、英語版では、メキシコ出身ベテラン女優のアナ・オフェリア・ムルヒアが演じている。また英語版では、エドワード・ジェイムス・オルモス、チーチ・マリンなど、チカーノ文化を代表する面々が声優陣に名を連ねているのが面白い。ちなみに、主人公ミゲルを冥界で助けるエクトールの声を演じるのが、メキシコ出身の俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルなのは、英・西語版で共通している。
また、特筆すべきなのが、映画音楽。出演もするガエルや、ポップ・スターのナタリア・ラフォルカデ、メキシコ北部の演歌=コリードのブロンコ、エレクトロニック音楽のカミロ・ララのほか、伝統音楽ソン・ハローチョの代表グループ、モノ・ブランコや、ロック界の重鎮、アレックス・ロラらが、カメオ的に参加している。まさに、音楽にも様々なメキシコが詰まっているのだ。日本では2018年3月公開の本作だが、どんな反応があるのか、楽しみである。
(メキシコシティ●長屋美保)


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