サルヴァドールの新人ミュージシャンが発表したアルバム『Japanese Food』

サルヴァドールの新人歌手 ジオヴァーニ・シルヴェイラ(26歳)

サルヴァドールの新人歌手
ジオヴァーニ・シルヴェイラ(26歳)

ブラジルの有名化粧品会社Naturaは、音楽支援活動にも力を入れており、大きなフェスティバルやライヴを積極的に後援している。今年からサンパウロのピニェイロスでCasa Naturaというコンサートホールも設立。毎年新人を公募し、彼らのレコーディングやライヴのスポンサーになり、新たなミュージシャンを発掘している。
そんな公募で2015年に選ばれたサルヴァドールの新人歌手ジオヴァーニ・シルヴェイラ(26歳)。彼の今年発表されたデビューアルバム『Japanese Food』が静かな反響を呼び、2017年のベストアルバムの一枚に数えられると批評家たちからも絶賛されている。
ジオヴァーニは、2009年から2012年まで地元でVelotrozというバンドで活動。バンド解散後ソロになり、7曲のEPを発表。その中の曲「Ancohuma」はバイーアのエドカドーラFMミュージックフェスティバルで優秀賞を受賞した。今回のアルバムは、ミルトンのクルビ・ダ・エスキーナ、ファギネル、カエターノ・ヴェローゾ、レジアゥン・ウルバナ、イタマール・アスンサォン、そしてカナダのマック・デマルコたちのテイストの入った音源が、集約されている。か細く透明な声に、バックは今流行りのエレトロ二クスを使用した音とは、かけ離れたアナログ的なバンドで、独特のアレンジを聴くと、70~80年代の曲にも思えてくる。シンプルなジャケットデザインとネガカラーフィルムで撮影したような色調の写真もレトロな風味を感じさせてくれる。
アルバム内の曲は2012年から2016年の間、作りためておいた曲をセレクト。歌詞は、ジオヴァーニが歩んできた人生において、自分の周辺で接した環境、友人関係などからインスピレーションを感じて作りあげた。太陽、光、風、花などのシンプルで日常的な風景が、彼の繊細な感受性を通して、映画のワンシーンとして次々と流れてくる。同時にデリケートな私小説を読んでいるようでもある。新しい音作りにこだわらず、自己の虚無感、現代の大都市で生きる複雑さをキーワードに、自身の世界観を素直に創り上げたアルバムのように思える。
タイトルの『Japanese Food』は、ジオヴァーニの彼女の昔のバンドの名前から由来。アルバム収録曲とはあえてかけ離れたタイトルにしたかったという。また、アルバム録音時、80年代のSF映画『レポマン』と青春映画『ブレックファスト・クラブ』を観て、アルバムの最終段階の参考にするほど映画マニアでもある。
Balaclavaレコードより、youtube でアルバム全曲聴け、サイトからはダウンロードもできる。

(バイーア●北村欧介)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ11月号に掲載されています。
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