ノルウェン・ルロワ、5年ぶりに 新作『Gemme(ジェム)』をリリース

ノルウェン・ルロワ 新作『Gemme(ジェム)』

ノルウェン・ルロワ
新作『Gemme(ジェム)』

ノルウェン・ルロワ、1982年9月生まれだから35歳になったばかり。長年のパートナーである仏テニスマンのアルノー・クレマンとの間にもうけた第1子を7月に出産し、ますます艶っぽく以前にもまして声にも柔らか味が加わったようだ。臨月間際の6月には大きなお腹を抱えて仏テレビの「ヴォイス」という歌のオーデション番組にゲスト出演して伸びやかなヴォーカルで「ジェム」を披露したことがあった。そう、9月1日発売の新譜『Gemme(ジェム)』(ユニバーサル・ミュージック)の曲だったのだ。
2010年に発表した『ブルトンヌ(ブルターニュの女)』が100万枚以上のセールスを上げて大ヒットし、それに続く2012年の『オ・フィーユ・ドゥ・ロー(水の娘たち)』から数えて実に5年ぶりに第6作目となるアルバム『ジェム』をリリースした。ファーストネームのノルウェンはブルターニュ語を由来とする名前だ。ブルターニュ生まれ、幼少の頃にブルターニュで数年過ごした後はフランス各地を転々とするが、『ブルトンヌ』でブルターニュ人としてのアイデンティティを強調し、ケルトの魂を歌い上げた。同盤のツアーではアラン・スティーヴェルをはじめブルターニュの主要アーティストやグループらとコラボレーションし、ブルターニュを前面に出したステージをフランス各地で展開した。
本作『ジェム』ではがらりと趣が変わり、流れるようなメロディーを主軸としたアングロサクソン系の耳に心地よいポップスとなっている。ノルウェン・ルロワは2001年から2008年まで続いた仏民放テレビ局主催の4ヶ月間にわたる歌とダンスの合宿強化訓練をくぐりぬけて選抜されるオーデション番組「スターアカデミー」で2002年、第2期生として見事優勝を果たした。翌年リリースしたデビュー盤『ノルウェン』および第2作目の『イストワール・ナチュレル(自然史)』は新人賞を受賞するなど好調な滑り出しであった。今回まさにその古巣のスタイルに舞い戻ったような感じがする。
本盤『ジェム』はフランス語と英語の曲が巧みに交差する。エドガー・アラン・ポーの詩を歌った「ザ・レイク」、特に「ア・ドリーム」の中で高音部に移るときのヴォーカルがゆっくりと昇華し、神秘的に聴かせてくれる。そうかと思えば「ラン・イット・ダウン」の電撃的なアップテンポで攻めたてる。フランス語で歌うバラード、「ス・ク・ジュスイ(私とは)」も物憂げなヴォーカルから未来に向けて一気に開花するかのような声の変化に注目したい。フランス語と英語を隔てる壁がまったく取り除かれ、ひとつの融合した世界を構築するノルウェン・ルロワ。その自由自在に七変化するヴォーカルがかもしだす音楽空間が楽しめるアルバムだ。
(パリ●植野和子)


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