ハファ・モレイラとパイナップルのビデオクリップ問題の過激化

ハファ・モレイラ

ハファ・モレイラ

今年、リオのTシャツ会社パイナップルが、数多くのMCたちが出演するビデオクリップ「Poetas No Topo」を制作し、話題をさらった。
クリップ出演にまず呼ばれたMCフロイドは、彼のお気に入りのグアルーリョス(サンパウロ)のMCハファ・モレイラをプロデューサーに推薦。シリーズはパート1からパート3(パート3は3章に分かれている)まであり、ハファはパート2に参加。クリップ参加者の大部分がブームバップというラップのクラシカルなスタイルであるが、ハファのスタイルは90年代から始まり、2000年になってからメジャーになったトラップスタイル。このクリップシリーズは大好評で、YouTube上全作品で3300万回以上の視聴件数を記録している。
しかし、ハファは、パート3に人気グループ、ハイカイスのボーカル、クアリーを参加させたことを痛烈に批判。以前ハイカイスが歌った曲の中に人種差別の内容があり、ある大きなフェスティバルに参加した唯一のMCがこの白人グループのハイカイスだけだったという事実にハファは以前からいい思いを感じていなかった。彼はツイッターで白人MCたちが、もともと黒人の音楽であるラップ界に乱入していると批判を繰り返した。
ブラジルでは、ハファだけに限らず、MCたちはネットを通じて、なにかとお互いを攻撃する傾向があるようである。また、ハファは、スポンサーになった会社パイナップルを攻撃。ビデオ参加のギャラが支払われず、パイナップルのTシャツしかもらわなかったと公表した。そして次に「振り込め、振り込め」という歌詞を羅列した「CA$H」という曲を制作発表。 これに反応したパイナップルが、ハファが参加していたビデオパート2(視聴者数1500万件以上)をYouTube から削除。代わりにハファの歌部分だけをカットした新しいバージョンに取り替えた。それに、新バージョンのビデオで他のMCが歌っている後ろで踊っているハファの顔だけをモザイク処理した。彼の顔が若干見えそうな微妙に薄いモザイク加工である。その結果、さらに強烈にハファをからかっているようなビデオクリップに仕上がった。削除されたハファは「Paga O Que Ce Deve Pra Mim(借金を俺に返せ)」という曲を作ってYouTubeに掲載。「借金を返せ。パイナップル(Tシャツ)だけは嫌だ。500レアル? 少なすぎる、もっとだ。返さないとお前のコンドミニアムに侵入する。シャクリーニャは死んだけど、次はお前だ」とメロディーはかわいらしく聴こえるが、歌詞はいたって過激。
パイナップルは、このクリップで新たな収入があればアーティストたちに支払う予定であるとしているが、ハファだけは支払わず、彼の分は彼の地元の学校に寄付すると発表している。尚、ハファとパイナップルとの契約内容がはっきり公表されていないので、どちらに非があるのかまだよくわからない状況である。

(バイーア●北村欧介)


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