ファンキを法律で禁止へ? ロマーリオが市民の声を国会に提出

ロマーリオ議員

ロマーリオ議員

ブラジルのダンス音楽の一つファンキは、その激しいビートと下劣な歌の内容で、ペリフェリア(都市の周辺部)やファヴェーラの若者から支持を得ている。もはや若者の文化を語る上で欠かせない大衆音楽だ。しかし、多くの場合、その発信地が都市の貧困エリアであり、麻薬や暴力の温床と目されるために、これを忌み嫌い、脅威と感じる中産以上の市民も多い。
フェイスブックに「ファンキはクズだ」のページを掲載するサンパウロ在住個人事業主のマルセロ・アロンソ氏は、ファンキを法律で禁止すべく、国会上院のホームページ上で法規制を求めて署名を集めた。市民の声に耳を傾けるべく2012年に上院が開設したこのホームページは、市民が法規制の請願を求める窓口だ。ある請願に対して4ヶ月以内に2万件以上の署名が集まった場合、上院はこれ審議した上で、国会に持ち込む。アロンソ氏の請願に対しては2万件以上の署名が集まった。
「ファンキは犯罪を擁護し、警察の殺害を歌う。ファンキの歌手は、頭の代わりにケツを振って未成年を導く。」とアロンソ氏。アロンソ氏が上院のホームページに綴った請願も「パンカダォン(ファンキ会場)は未成年にドラッグの消費を促し、乱交、幼児虐待、強盗や誘拐などを行う犯罪者を擁護している」と偏見に満ちている。
しかし、アロンソ氏は「偏見ではない。ファンキは実際にゴミ以下だ。ゴミならばリサイクルできるからだ」と挑発的だ。アロンソ氏の法規制請願に対して、当然ながらファンキ関係者は反論している。
「アロンソ氏の言い分は差別だ。ファンキは、娯楽であるとともに街の郊外に排除されている貧しい若者に自尊心を与えるものだ」とMCタズが言えば、プロデューサーのアラン・シルヴァ氏は「たかが2万件の署名に、ブラジル中の百万ものブラジル人の楽しみを奪う資格はない」と賛同する。
さて、市民からの法規制審議の請願に対して、それを上院に提出する議員が抽選で決められるのだが、本件は、かつてセレソンを優勝に導いたロマーリオ議員(ブラジル社会党)が提出することに決まった。ロマーリオ議員は、ファンキの禁止には反対の立場で、バイレ・ファンキ(ファンキ・パーティー)中に偶発的に起こる犯罪行為を、アーティステックな表現としてのファンキのせいにするのは誤りだという。「暴力、アルコールの過剰摂取、乱痴気騒ぎなどは祭りにつきもので、ファンキに限ったことではない」と擁護している。
ロマーリオ議員は、本件を審議するにあたって、アロンソ氏の他に、参考人としてアニータやヴァレスカ・ポポズーダなどのファンキ歌手や文化人類学者に国会への出頭を求める意向だ。
ブラジルはいま、大統領が再び失脚しそうで、それどころではないはずだが、ファンキの行方も気になるこの頃だ。
(サンパウロ●仁尾帯刀)


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