ルイス・ゴンザーガを巡って~絶版アルバム再リリース、そしてテーマパーク閉鎖の危機

ゴンザーガ博物館の正面

ゴンザーガ博物館の正面

ノルデスチ音楽を豊饒化した「バイアォンの帝王」ルイス・ゴンザーガ(1912~1989)、没後28年経った今日でも、彼の代表曲は、時代も地理的制約も超えて、ノルデスチはもちろんブラジル中で口ずさまれ続けている。
そんなゴンザーガのテーマパークといえる「パルケ・アーザ・ブランカ」が、彼の出身地エシュー(州都レシーフェから西に約630‌㎞)に開設されたのが、1999年だった。ルイス・ゴンザーガ博物館を設立する構想は、彼の存命中から練られていたが、実際に完成して、ホテルなどの付帯施設も設けられてテーマパークとなったのが1999年だった。博物館では、彼が生前愛用した楽器(アコーディオン)、レコード、写真など500点もの貴重な資料が展示され、霊廟にはゴンザーガの亡骸が収められている。ホテルは80室もあり、訪問者はゆっくりとゴンザーガを偲びながら一日を過ごせる環境なので、ファンを主体に多くの入場者を受け入れてきた。
このテーマパークが、今、財政難に陥っている。主たる収入源は、入場料収入と土産品など関連グッズの販売だが、最近は入場者数も減ってきたため、専従職員10名の人件費など固定経費をカバーできていない。2012年のゴンザーガ生誕100周年記念の年は入場者が急増して財政も安泰だったが、この時の“余剰金”を食いつぶしているのが現状だ。このままでは閉鎖か、とまでいわれるようになってきている。そんな暗い報道が広まっていた、まさにその時、明るいニュースが、飛び込んできた。1970年代から80年代に出された絶版アルバム15枚がソニーミュージックからCD再リリースされるというのだ。
「ウ・カント・ジョーベン・ヂ・ルイス・ゴンザーガ」(1971年)は、旧友ウンベルト・テイシェイラとのコラボ復活記念だし、「サンジョアン・ケンチ」(1971年)は、息子ゴンザギーニャとのデュエットで「ア・フェスタ」(1981年)にはドミンギーニョスとの共演やミルトン・ナシメントとのデュエット(「ルアール・ド・セルタゥン」)など。ファグネルとのコラボは「ルイス・ゴンザーガとファグネル」(1984年)、「ルイス・ゴンザーガとファグネル-2-」(1988年)に収録されている。この再リリースによって、ゴンザーガが改めて再評価されることになろう。喜ばしい“事件”である。
(レシーフェ●岸和田 仁)


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