ニルゼ・カルヴァーリョの新たなるプロジェクト〝歌ものショーロ〟

ニルゼ・カルヴァーリョ

ニルゼ・カルヴァーリョ

ラパ地区でトップクラスの人気を誇るグループ「スルル・ナ・ホーダ」が、4月末に再来日し、東京の夜を沸かすごとくブラジル音楽ファン、ラテン音楽界に旋風を巻き起こし興奮を誘ったことは、まだ記憶に新しい。

このグループのメインボーカルをつとめるニルゼ・カルヴァーリョは、歌手として活動を始める前、少女時代に天才バンドリン奏者と呼ばれキャリアをスタートさせていた。その後はリオデジャネイロのサンバ再生で最も重要な地区・ラパでニルゼ(歌、カヴァキーニョ)を中心に「スルル・ナ・ホーダ」を結成し、現代サンバの真髄として、リオ・デ・ジャネイロを代表する新世代サンバ・グループとして、第一線で活躍し続けている。このグループの歌姫、幼少期から活動してきた実力派アーティスト、ニルゼが今ソロライブ活動に全力を注いでいる。

今年の1月末に発表されたソロプロジェクト“Choro Canção(歌ものショーロ)” が、スルル・ナ・ホーダでの日本公演を終えた今、再稼動し始め、リオのショーロ・サンバシーンに新鮮な衝撃を与えているのだ。

ニルゼは、今までにも何枚かソロアルバムを発表しているが、それらは歌ものショーロでは無くサンバを歌っていた。ショーロは、本来歌う為の音楽ではなく、器楽音楽であることから、歌詞のある曲が少なく、ショラォン(ショーロを演奏する人)の中には、歌ものショーロを好まない人が少なくない。ただ、ニルゼの場合は、彼女自身が最上級のショラォンであること、そして彼女の歌声が美しいこと、しかもただ歌うだけではなく、第一楽器のバンドリン以外にも、マルチプレーヤーとしてカバキーニョ、ギターでの弾き語りを容易にこなしてしまうことから、誰もが敬意を払っている。

レパートリーは、19世紀のワルツ、ポルカから21世紀まで、3世紀の作品を取り上げ、観る者聴く者を虜にする。ショーロの父と呼ばれているフルートの名人ジョアキン・カラードの作品、1880年「Flor Amorosa」を始め、同じくブラジル音楽の父と言われるピシンギーニャと技巧派フルート奏者ベネジート・ラセルダの共作「Um a Zero」から、現代を代表するコンポーザー、エデュ・クリーゲの「Novo Amor」、マリーザ・モンチとアルナルド・アントゥネスの「De mais Ninguém」をレパートリーに、21世紀にあるべきショーロのスタイルを表現し、これからのブラジル音楽界に新しい旋風を巻き起こしてくれること、間違いない。

(リオデジャネイロ●MAKO)


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