才女アドリアーナ・カルカニョットがコインブラ大学の教壇に立つ

コインブラ大学で7月まで教鞭を執る予定

才女アドリアーナ・カルカニョットがコインブラ大学で7月まで教鞭を執る予定

天は二物を与えず、というよく知られたことわざがあるが、MPBの秀でたミュージシャンにはその言葉が当てはまらないことが多い。

2011年に、本誌とJ-Waveによる共催で来日公演を行ったアドリアーナ・カルカニョットは、公演活動を休んで今年2月から7月までポルトガルのコインブラ大学で教鞭を執ることとなった。

13世紀に設立されたコインブラ大学は、世界有数の歴史の古さを誇り、ヨーロッパ屈指の国立大学として知られる。同大学文学部ブラジル学研究所より客員教授として招聘されたカルカニョットは、主にブラジルの歌詞や詩、あるいは児童書についての公開講座を行う。2月22日に行われた初回の講座では、自らの音楽活動の軌跡や2004年からアドリアナ・パルチンピンの別名で取り組んでいる子どもを対象とした音楽制作について語った。

「私は、私は、と自分自身のことを授業として語るなんて、人生の中でも最も難しいことだったわ。」とカルカニョットは授業後に、メディアに対して語っている。

ブラジル学研究所コーディネーターのオズヴァルド・マヌエル・シルヴェストレ氏はカルカニョットの招聘の理由について次のように述べている。

「アドリアーナ・カルカニョットは、稀有な経歴をもつシンガー・ソングライターです。カエターノ・ヴェローゾの功績、ポルトガルを代表する詩人マリオ・デ・サー=カルネイロの詩作、またはエリオ・オイチシカのパフォーマンスを吸収しながら、ドリヴァル・カイミ、ボサノヴァ、ロベルト・カルロスあるいはその他の壮大なブラジル大衆音楽の流れを受け継いでいます。彼女を客員教授として招き、多くを学べるのはとても光栄なことです。」

2013年にユネスコによって世界遺産に登録されたコインブラ大学は、ポルトガル語による全ての表現者の拠り所となり、またブラジルと大学との歴史ある関係を活性化し、強化するために大学の大使を選定することとした。2015年の創立725周年事業の一環として、大学は、その附属の壮麗なジョアニナ図書館でカルカニョットの公演を企画したが、その際に彼女に大使就任を依頼したのだった。今回の客員教授としての招聘は、この経緯によるものだ。

カルカニョットは、客員教授として過ごす日々を、まるでアーティスト・レジデンスのようだと語る。この期間を利用してコインブラ大学を題材にした児童書を執筆するそうだ。

ブラジル音楽ファンとしては、ポルトガルの古都の知の殿堂で過ごす経験が、今後の音楽制作にどのように影響するのかに興味が尽きない。次のアルバムが楽しみだ。

(サンパウロ●仁尾帯刀)


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