音楽業界が一丸となってチケット転売への規制を実現

ビアゴーゴーのチケット売買のサイトは日本語でも利用できる。

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以前から音楽業界を中心に批判の声が上がっていたネット上でのコンサート・チケットの転売に対して、ついに法的な規制がかかることになる。きっかけとなったのは、2月にベテラン、ホアキン・サビナがチケット転売サイト大手ビアゴーゴーに対して法的措置を取ったこと。公式価格90ユーロ(約一万六百円)で販売される予定であったラ・コルーニャ公演のチケットを、発表になる前の時点であたかも完売になったチケットの先行発売のように宣伝して、500ユーロ (約5万9千円)を超える金額で取引を行うという、詐欺としか呼びようのない極めて悪質な手法に堪忍袋の尾が切れたようだ。サビナがプロモーターとともに訴訟を起こし、政府に対してもネットでの転売を禁じる法律の制定を求める声明を出したことで、チケット転売の問題に大きな注目が集まった。

サビナに続いたのが、国際的な人気を誇るアレハンドロ・サンツ。二月中旬、初夏のマドリッド公演のチケットがネット上で大規模に転売される被害にあったと訴えて、転売に反対するプラットフォームAlianza Anti-reventaを設立、音楽関係者に広く参加を呼びかけた。これに 音楽プロモーターの8割以上が参加する業界団体APMも賛同して「税務局はCDやチケットに21パーセントの付加価値税をかけて私たちを苦しめる代わりに、この問題をもっと懸念するべきだ」という政府の姿勢を批判する声明を発表するなど、音楽業界が一丸となって動き出した。

音楽業界にとってネット上の転売の問題点はチケット価格の高騰による莫大な利益が、ミュージシャンにも音楽プロモーターにも還元されずに、全く無関係の第三者の懐に転がり込むということ。CDからネット配信への転換による音源の売り上げが低下の一途をたどる中で、コンサートが重要な収入源となっている現在、チケット価格の問題は死活問題になりうる。

根本的な原因は、1982年にサッカーのワールドカップ開催を機に導入された現行法には、当然のことながらオンライン上での売買は想定されていないため、法律上の空白が生じていることだ。さらに消費者保護の観点からも対策が必要なテーマであることから、自治州レベルで規制する試みもあったが、懲罰規定がなく実効力を伴わないことから、国レベルの規制法制定が求められていた。

音楽業界からのプレッシャーのを受けてようやく国も重い腰を上げ、先週下院は賛成多数でオンライン上のチケット転売を規制する法案を可決した。

(バルセロナ●海老原弘子)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ5月号に掲載されています。
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