グレッグ・ランドゥ企画、『ハローチョ・パワー』が発足

 メキシコ東部ベラクルス州発祥の伝統音楽ソン・ハローチョを、オルタナティヴにアプローチする画期的なアルバム『ハローチョ・パワー』制作プロジェクトが2017年1月より始動した。集まったのは、グラミー賞に2度もノミネートされている、ロス・コホリーテス、80年代より伝統と他ジャンルをミックスした先駆的存在のソン・デ・マデーラ、ジャズやフラメンコ、ロックをミックスしたソネックス、管楽器も入ったジャム、レゲエ系バンドのロス・アグアス・アグアスの、現代ソン・ハローチョを代表するベラクルス州出身の4組。プロデュースは、米国の敏腕音楽プロデューサー、グレッグ・ランドゥと、チカーノ・ロック・バンド、ケッツアルのリーダー、ケッツアル・フローレスが担う。両名のプロジェクトは、過去にグラミー受賞経験があるだけに、この『ハローチョ・パワー』も、国際的な注目を集めることになるだろう。

なぜ、このプロジェクトが発足したのか、ロス・アグアス・アグアスのベーシスト、ダニエル・クルスに電話で聞いたところ、「2016年10月、グレッグ・ランドゥが、ロス・コホリーテスの新作録音のために、州都ハラパで、ソネックスのメンバーが運営するソン・ハローチョ文化センター兼録音スタジオ『ラ・カサ・デ・ナディエ』を訪れた。その際に、地元のグループを集めたアルバム『ハローチョ・パワー』を作りたいという話になって、僕たちは、彼のアイデアに共感した。せっかくだから、ベラクルスの地元で録音し、発信するプロジェクトにしたいので、同文化センターの録音スタジオのシステムを完璧にしたり、宣伝費を捻出するために、今年のトラコタルパンのソン・ハローチョ・フェスティバルを皮切りに、コンサートを行い、資金を集めている。アルバムでは、各グループが、書き下ろした曲を録音し、4バンドがセッションする曲も収録予定だ。すごく気合いの入ったアルバムになるに違いない」と、語る。具体的なリリース日程は、決まっていないが、

「まずは、資金を集めて、米国のプロデューサーたちを、ベラクルスへ招かなければならない。今年いっぱいは、このプロジェクトに集中するつもり」とのことだ。

米国の資金や基盤に頼らず、メキシコ主導で、プロジェクトを進める心意気が素晴らしい。これが達成したあかつきには、世界的ソン・ハローチョ・ブームが訪れる日も、近いだろう。

(メキシコ●長屋美保)


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