ニューヨークのタンゴ ペドロ・ヒラウド・タンゴ・オルケスタ

ニューヨークで活躍するコントラバス奏者ペドロ・ヒラウド

ニューヨークで活躍するコントラバス奏者ペドロ・ヒラウド

 ニューヨークで活躍するアルゼンチン・コルドバ出身のコントラバス奏者ペドロ・ヒラウド。イースト・ビレッジにある会場はロマンチックなバーを備え、洗練されたニューヨーカーで溢れていた。上質なアーティストのパフォーマンスを提供し、若手を支えるという目的の元、1998年に創立されたジョーズ・パブ。レディ・ガガからレナード・コーエン、ノラ・ジョーンズ等、数知れぬアーティスト達に愛されている。

トロイロの「レスポンソ」で幕を開けたステージ上にはコントラバス、ピアノ、バンドネオン。ペドロのコントラバスが効いたアレンジである。2曲目からはニック・ダニエルソンの上質なバイオリンが会場を包み、ピアソラの「タンゲーラ」から、オリジナル曲へと続く。

「ラ・ルシエルナガ」からはチェロ、二台のバイオリンが加わり、バンドネオン不在のアレンジで、バイオリンとコントラバスの軽快な掛け合いが興味深い。ピアソラの「ブエノスアイレスの夏」をプグリエーセ版で演奏。エミリオ・テウバルのピアノが切なさを増し、アルゼンチン人を母親に持つニックのバイオリンが心を揺さぶる。

自身の作品の中でも最も暗い曲と語る「ラピダリオ」。時に愛する女性を抱く様に、時に祈るような姿でコントラバスを演奏するペドロの姿が印象深い。

ペドロと同じくコルドバ出身の歌手ソフィア・トセージョが「マリポシータ」を歌えば、それまでユニバーサルで洗練された上品な音楽として聞こえていたタンゴが急にアルゼンチン臭くなる。オリジナル曲「ア・オクタビオ・ブルネッティ」で演奏を終えた彼等への、観客の熱狂ぶりには少し驚かされる程であった。

ジャズ奏者として渡米、20年の月日をニューヨークで過ごす中でタンゴへの愛が深まったと語るペドロ。他に演奏するジャズ、キューバ音楽、ベネズエラ音楽、クラッシクが彼のタンゴに影響を与えているという。

この2〜3年でたくさんのバンドネオン奏者がやってきてニューヨークのタンゴシーンも活気づいた。

タンゴを演奏することは誇り・喜びであり、自分に正直になることができ、唯一無二のもの。タンゴを知らない人達により多くタンゴを届けるという、外交的な役割も果たしたいという思いも語る。

もはや世界的に愛されるポピュラーミュージック、つまり民衆の音楽であるタンゴは世界各都市でそれぞれの音楽を吸収し、それぞれの形で発展し続けてていくのかもしれない。

(ニューヨーク●折田かおり)


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