新たなタンゴ音楽の聖地CCKでの 2016年プログラムを振り返る

文化芸術の発信地キルチネル文化センター

文化芸術の発信地キルチネル文化センター

 

コリエンテス通りをつきあたると左手にはタンゴダンス世界選手権決勝が行われることでも有名なルナ・パークが佇み、右手には2015年に文化芸術の発信地としてオープンしたキルチネル文化センター(CCK)が堂々と構えている。豪奢で優美な造りの旧中央郵便局を改装した建物内に、複数の素晴らしい音楽ホールを備え、展示やワークショップ等、芸術プログラムを楽しむことができる。前政権の汚職の問題等で、開館早々に一時閉鎖の危機にも見舞われている。

2016年は、「タンゴのスタイルの多様性や美しさ」を冠に、クラッシックからコンテンポラリーまで「市民の音楽」としてのタンゴ音楽プログラムが充実された一年であった。

9月と11月にはロサリオ、サンタフェ、コルドバ、サンタクルス、ネウケンといった地方出身の演奏家や、現地で活躍する音楽家達を集めた『ラ・パトリア・タンゲーラ』が開催された。アンドレス・リネツキー氏によるこのプログラムは、タンゴがもはやブエノスアイレスだけで愛される音楽ではなく、アルゼンチンの音楽であるということを印象付けた。

10月に開催された『オルケスタ・ティピカ・マラソン』では、オルケスタ・ティピカ・タントゥ—リ/ピチューコ/サン・スーシ、コロール・タンゴと、現代ブエノスアイレスのミロンガの夜に彩りを添え続けている楽団が勢ぞろいした。

タンゴの日に合わせて12月に開催された『タンゴ・ウィーク』では、シンフォニック・ホールでエル・アランケがアメリータ・バルタールを歌手に迎え、ラウル・ラビエとマリア・グラーニャはセステート・マジョールと共演、クーポラのオープン・スペースでは現代タンゴの演奏家達、小ホールではバンドネオン・デュオ達によるコンサートが開催され、他にも会場内の至る所でタンゴダンスのレッスン、ラ・フアン・ダリエンソ楽団の生演奏によるミロンガ等が開催された。

他にも一年を通して、ネストル・マルコーニやロドルフォ・メデーロスがステージを華やげ、巨匠たちに捧げるコンサートも開催された。オラシオ・サルガンへのオマージュを息子のセサル・サルガンが指揮し、マリアーノ・モーレスへは孫のガブリエル・モーレスが、エクトル・スタンポーニへは孫のアナ・ソフィア・スタンポーニが特別ゲストとして参加した。全てのコンサートが無料で鑑賞できる。2017年のプログラムはまだ公開されていないが、本年も是非、上質なタンゴ音楽コンサートの開催に期待したい。

(ブエノスアイレス●折田かおり)


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