シャペコエンセ、悲劇の墜落事故にミュージシャンが捧げた思い

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ブラジルサッカー史上最大の悲劇は、去る11月28日に起こってしまった。ブラジル南部の人口約20万人のシャペコ市の弱小クラブ、シャペコエンセが南米の主要選手権コパ・スダメリカーナの決勝に進出したことは、大番狂わせとしてメディアを賑わせた。しかし、決戦の地コロンビアに、いざ出陣と発ったチャーター機が墜落し、快進撃は悲劇に一転したのだった。選手を含む乗客71人が帰らぬ人となった。

この悲劇が報じられるとサッカー界ばかりでなく、世界の有名無名の多くの人が、追悼と連帯の意思を示した。音楽界からも哀悼を表したアーティストがいた。知名度の高いところでは、10、11月に南米ツアーを行ったばかりのロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズが、クラブチームのエンブレムにバンドのそれを合わせたものをインターネットに掲載するなどしたことが知られている。

ブラジルからは、世界的なヒット曲「アイ・スィ・エウ・チ・ペゴ」で知られるミシェル・テロや同じく女性からの人気が高い筋肉系イケメン歌手ルーカス・ルッコが即席の追悼曲をインターネット上の動画で発表した。

両者とも軟派な歌手ということもあり、ご都合主義だと批判もされている。しかし、多くのブラジル人が心を痛めたように、彼らも感情を揺さぶられたはずだ。

ミシェル・テロは無題の曲で、夢、計画、愛や抱擁という言葉を連ねて人生のはかなさを説いた。一方ルッコは、追悼曲「天使たちのチーム」で、自らの役割を遂げた勇士たちによるゲームが天国で行われるだろう。天使たちは「ゴール!」と叫ぶ代わりに「アーメン」と声高に唱えるだろうと歌った。

さて、戦われることのなかった実際の決勝だが、対戦相手のアトレチコ・ナシオナルが不戦敗というスポーツマンシップを示し、シャペコエンセが優勝を飾った。

主力選手のほとんどを失ったクラブチームの再建は困難を極めるだろう。しかし、チームはエンブレムを変えて前を向いた。これまでのエンブレムの上部に優勝を示す大きな白い星、そしてチーム名の略字ACFのサッカー(futebol)を意味するFの字の中央には他界した選手たちを記憶に留めるためにもう一つの星印が加えられた。

(ブラジル●仁尾帯刀)


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