まさに孤軍奮闘! 南米で唯一現存するレコードプレス工場兼レーベルのポリソンが、今やネット配信が主流の音楽ソフト産業において、LP盤レコードを増産中だ。
今月はオス・ノーボス・バイアーノスの名作と讃えられる3作目『ノーボス・バイアーノスFC』と4作目『ノーボス・バイアーノス』をリリース。言わずと知れた73年、74年に発表されたアルバムの復刻版だ。この他、これまでにもチン・マイアやジャルズ・マカレの初期のアルバムあるいは、オス・ムタンチスの、代表作を含む7タイトルのボックスセットなど、古きを好むブラジル音楽愛好家には垂涎もののアルバムを継続的に復刻してきた。
ポリソンは、創業から時代の波に逆らってきた。CD全盛の90年代末に、大手レーベルからレコードプレス機器類を安価で買い取り1999年にレーベルを開設。インディーズのアーティストや小規模レーベルのプレスを手がけてきたが、10年に満たず経営難に陥り、2007年に閉鎖。
しかし、北米、ヨーロッパでのレコード市場の盛り上がりに注目してきた現在の経営者が2009年に再建して今に至っている。
「レコード市場が過去のように盛り上がることはないでしょう。世界はサイバー化の時代にあります。だからこそ、音楽を本当に愛する人たちが聴くための一つの手段としてアナログレコードは存続していくでしょう。レコードのロマンティックで懐古的な良さは、なかなかいいと思いませんか?」とは、ポリソン代表のジョアン・アウグスト氏の談。
同社によれば、2015年は前年比で約30%増の生産を計上した。小規模産業ながら、経営を続けるのは、その数字に期待するからだろう。
気になる今後のリリースだが、11月には、アルセウ・ヴァレンサの『モリャード・デ・スオール』、『エスペーリョ・クリスタリーノ』などの初期ゴールドディスクを含む4枚ボックスセットを発売予定だ。また、同月にはオ・ハッパのファーストからサードまでのアルバムのリリースも決まっている。
時代の潮流を築いた楽曲の、レコードでの復刻に喜びを感じるのは筆者の年のせいか?レコードのモノとしての価値のますますの再評価を期待するばかりだ。
(サンパウロ●仁尾帯刀)
こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ12月号に掲載されています。
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