yb music
活況なサンパウロのシーンでいま重要なユニット
曲目
1. Cipó 2. Perder Essa Mulher 3. Beth 4. Onde é que tem? 5. Este Homem 6. Homem Comum 7. Palavra Perdida 8. O Cinema é Melhor 9. Bloco Torto 10. O Cadáver
活況のサンパウロのシーンで、パッソ・トルトが最重要ユニットの一つであることには疑問の余地がない。しかも本作では現在考え得る最良の女声がそこに加わった。アルバムタイトルはキコ・ヂヌッチらと共にメタ・メタで活動し、サンパウロの音楽界で縦横無尽に活躍するサックス奏者チアゴ・フランサへのオマージュ。チアゴはここでは1曲として吹いていないが、中ジャケでの後ろ姿はメンバーより存在感があるのも彼ららしくある意味アヴァンギャルドだ。さて3作目となる本作では前述の通りナーの歌声が加わったことで、前衛が生み出す浮遊感のスケールは比肩するものがない。キコ、ホドリゴ、ホムロ、マルセロが雄弁に爪弾く弦の響きは“シネマ=カンサゥン”とも称されるという。現代ブラジル音楽が分解され、アコースティックとエレクトリックの挟間で再構築されていく姿は、聴く者に10篇からなる1作の映画を見せてくれるに違いないのだ。
月刊ラティーナ2015年11月号掲載
(船津亮平)