録音年 2012年 cafe vinilo
ブエノスアイレスの新しい音楽発信スポット、カフェ・ビニーロで生演奏の定期ミロンガを開催しているオルケスタ・ビクトリアの第二作目となるライヴ・アルバム。プグリエーセ・スタイルに影響を受けているあたりは、同年代の若手楽団オルケスタ・フェルナンデス・フィエロとも類似性が感じ取られるが、室内楽やジャズの要素を組み込んだアレンジは個性が出ていて、いかにも新しいタンゴの世界といった妙。すばらしい仕上り!
曲目
●曲目 1. ノスタルヒアス 2. ラ・タブラーダ 3. スス・オホス・セ・セラーロン 4. アラバル・アマルゴ(苦い場末) 5. バルネリンのスピーチ 6. カンシオン・デセスペラーダ 7. フイモス 8. グリセール 9. エル・アンダリエゴ 10. エル・ポエマ・エン・グリス 11. ラ・カシータ・デ・ミス・ビエホス 12. ニード・ガウチョ●歌手:アグスティン・フエルテス、アリエル・バルネリン
2010年に結成されたオルケスタ・ビクトリアはピアノ、編曲のアレハンドロ・ドラゴを中心に、バンドネオン2、バイオリン4、ビオラ、チェロ、コントラバス、バスクラリネット、歌手2の総勢13名からなる大編成楽団。2枚目のアルバムにあたる本作は2012年12月収録のカフェ・ビニーロでのライヴ録音で、1930~50年代のタンゴのスタンダードを新しいアレンジで聴かせる作品となっている。Webで読めるインタビューなどによれば彼等はオラシオ・サルガンの影響を受けているとのこと。演奏スタイルそのものにはそれほどの類似性は見られないものの、確かにバスクラリネットの加入や美しいハーモニーにその片鱗が伺われる。室内楽やジャズからプグリエーセばりの強烈なリズムまで、曲によってはいろいろ盛り込み過ぎた感もなきにしもあらずだが、それを高い演奏力とアレンジの妙でねじ伏せてしまうようなところが面白い。パッケージ秀逸。
(吉村俊司)