UNIVERSAL
サンバ歌手に転向したわけではないが、サンバも真正面から堂々と歌う歌手のポジションを確立したマリア・ヒタが、満を持してラパの大箱クラブ、フンヂサォン・プログレッソで行なったライヴ。まず、最初から最後まで大合唱を続ける熱狂的なオーディエンスに圧倒される。レパートリーは『サンバ・メウ』と『コラサォン・ア・バトゥカール』のレパートリーが中心。肩の力を抜いて、けれん味なく歌うマリア・ヒタは終始、絶好調で、瞬発力も包容力も兼ね備えている。2人の剛腕パーカッション奏者が繰り出すピュアなサンバのグルーヴと、夫のダヴィ・モライスのオルタナ風味の超絶ギター、ハニエリ・オリヴェイラのジャズサンバ風味のシャープなキーボードがからみあう、音色や音像のアンサンブルも新機軸。ラパの復興と共に進化してきた現代のサンバが稀代のディーヴァを通じて新たな次元に到達した、そんな手応えがある。
月刊ラティーナ2016年9月号掲載
(中原 仁)