カヴァー・プロジェクトの第三弾は、ジョアン・ノゲイラ、マルチーニョ・ダ・ヴィラに続き、“21世紀のサンバ王”ゼカ・パゴヂーニョ。本作の曲名リストを眺めるだけで、「サンバ・プラス・モッサス」も「ヴェルダーヂ」も「デイシャ・ア・ヴィダ・ミ・レヴァール」もそこにはないが、80年代からのパゴーヂ史が凝縮されているのが理解できると同時に、ゼカがここまで多作であったことに驚くのは僕だけではないだろう。前述の3曲のように、サンバ界の外では(比較的)無名な、カシーキ・ヂ・ハモスや地元ドゥッキ・ヂ・カシーアスの市井のサンビスタの作品を取り上げ、国民的メガヒットに昇華させるイメージがゼカの場合余りにも大きいのがその理由だ。ヒルド・オーラとプロヴェッタ率いるオルケストラ・フリオーザは想像通りの演奏だが、いわゆるサンバ畑でない出自の歌手陣と、筋金入りの“バンダ・モレッキ”の化学反応は聞き所だ。
月刊ラティーナ2014年12月号掲載
(船津亮平)