初め四重奏、のちキンテートに改編したラ・カモーラの最新作。全曲メンバーの作品という意欲作で、ピアソラのラインを継承しつつ、新しい展開を盛り込んだ渾身の傑作アルバム。
曲目
●曲目 1. 今日の調べ 2. レナータ 3. アンダー・ア・サベール 4. ベレレ 5. コンブルシオネス(けいれん) 6. 子守歌 7. 逃げながら(フガンド) 8. エン・ウナ・デ・エサス... 9. タンゴスティナート 10. 宇宙の凧 11. 君のミロンガ 12. ペドリートのためのタンゴ●演奏:ルシアーノ・ジャングマン(bn)、セバスティアン・プルサック(vn)、ホルヘ・コアン(g)、ウーゴ・アスリン(cb)、ニコラス・ゲルシュベルグ(p)
ピアソラ以後のモダン・タンゴの進化を最前線で先導してきたラ・カモーラが結成20年を迎えた昨年の5月に録音したアルバム。92年11月にルシアーノ・ジャングマン、セバスティアン・プルサック、ホルヘ・コアンの三重奏でスタートして第1作を発表、96年にウーゴ・アスリンが加わって第2作(98年)を発表、02年にニコラス・ゲルシュベルグの参加で五重奏となってから3枚を発表しているので、通算6作目となる。以前はピアソラなど先人達の作品が半分ほどを占めていたが、05年録音の傑作『12の葉書』と本作では全曲を先鋭的なメンバー自作で固めるようになった。ゲルシュベルグ作 1. 9. 11. は自身名義の六重奏団でも録音しているので聴き比べると興味深い( 7. は02年盤でも録音)。切れ味抜群の演奏力で現代タンゴの音楽語法、感情表現、身体感覚に新次元を開拓する意欲に溢れた快作だ。
月刊ラティーナ2012年2月号掲載
(鈴木一哉)