録音年 2012-13年 ブエノスアイレス録音 ACQUA
曲目
●曲目 1. カミニート・ソレアード 2. 想いの届く日 3. 遥かなるわが故郷 4. 学生の恋 5. 首の差で 6. ボルベール 7. ある夜彼女は帰ってきた 8. 場末の苦悩 9. 孤独 10. わたしのギター 11. 彼女の瞳は閉ざされた●演奏:フェデリコ・レヒナー(p)、フランコ・ルシアーニ(armonica, per)、パブロ・モッタ(cb)、アンドレス・リットウィン(dr)
ジャンルの枠を超えた軽妙洒脱な、タンゴの巨人へのオマージュ。それぞれ広い活動の幅を持つ名手、フェデリコ・レヒナー(Pf)とフランコ・ルシアーニ(Acc)が、今回はガルデルの名曲たちを、モダンジャズの要素をふんだんに盛り込みながら料理してくれる。 2. をバラードでしっとりと聴かせるような、原曲の持つイメージに忠実なアレンジもあれば、カンドンベ調の 4. や、ラグタイムとタンゴの交差する 9. など、意外なアイデアも満載。フリーな即興音の上にメロディーを浮かべる 5. などでは、前共演作からの流れを汲む、内省的かつ実験的な響きも味わえる。これだけ多種多様な趣向を凝らしてもなお作品全体に統一感があるのは、やはりガルデルの旋律の親しみやすさゆえだろう。煌めく響きで鍵盤を駆け抜けるレヒナーと、エモーショナルな音色で音楽に息吹を与えるルシアーニによるレベルの高い演奏を、耳馴染みよく楽しめる良作だ。
月刊ラティーナ2014年9月号掲載
(清川博貴)