宮沢和史
島々百景

2,700円

LATINA

文と写真・宮沢和史。連載「島々百景」が単行本化。
解説・今福龍太

 過去から学び、失われた大切なものを呼び戻そうとする著者の意思は本書を通じて揺るぎない。歌手の活動を休止し、音楽という表現と社会の接点を見つめ直そうとする著者の内面を吐露した「本州奈良」の章は、その点で本書のクライマックスかもしれない。内省のなかにいる著者の悔恨も誇りも、おなじところにある。

 形のあるものは 何もあげられなかった
 形のないものしか あげられなかった

 ほんとうの悲しみは短調ではなく、いつも長調だ。歌手としての半生を回顧してこう歌いながら、「自分のような歌うたいは形のない歌をそっと風に乗せ、原っぱに逃がせてやることぐらいしかできない」と書くことは、だからたんなる謙遜でも後悔でもない。パウル・クレーの天使のように、瓦礫のなかから珠玉のような記憶を拾い集め、名のない道を歩みはじめること。島々への旅は、その希望と誇りを確認するための不可欠の行為であったことが、いま了解されてくる。

今福龍太「島々百景」解説 より



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